東芝,フラッシュメモリとCMOSトランジスタを近接して混載する技術を開発

東芝は,フラッシュメモリとCMOSトランジスタを同一チップ内に近接して混載する技術を開発した(ニュースリリース)。この技術をFPGA(現場でプログラムを書き換え可能なLSI)に応用することで,低消費電力かつ高性能な不揮発FPGAを実現することが可能となる。

近年,カスタムLSIの開発コストが著しく増大しており,チップ製造後に回路情報を任意に書き換えることができるFPGAの市場が増大している。FPGAは主に演算を行うロジック素子と,回路情報の記憶を行うメモリで構成されているが,高性能FPGAはロジック素子に揮発性のメモリであるSRAMを用いているため,消費電力が大きいという課題があった。

これを解決するため,不揮発性のフラッシュメモリを用いたFPGAが望まれている。しかしフラッシュメモリとロジック素子に内蔵されるCMOSトランジスタは,素子構造と動作電圧が大きく異なるため,同一チップ内への混載が困難だった。

そこで同社は,通常用いられているフラッシュメモリと異なる構造を持つMONOS型フラッシュメモリを適用し,書き込み手法と回路構造を工夫し,CMOSトランジスタとフラッシュメモリを近接して混載する技術を開発した。これにより,従来のSRAM型FPGAと同等の高速動作を実現しつつ,動作中の消費電力を削減することができ,メモリの占める面積も半分に削減することが可能になる。

SRAMをMONOS型フラッシュメモリに置き換えたことで,電源の供給を止めてもデータを失わないため,FPGA動作中にチップ内で使用していない領域の電源を部分的に遮断し,無駄な電力消費を削減している。テスト回路での試算では,ロジック使用率が80%の場合で,SRAM型FPGAに比べて約40%の電力削減が見込まれたとしている。

また,フラッシュメモリへの書き込みの際に大電圧を使用しても,CMOSトランジスタの特性を悪化させないホットエレクトロン現象を利用した書き込み手法と回路構造を採用したことで,性能を維持している。

同社では今回の技術について,協業可能な企業へのライセンスも視野に検討していくとしている。