京大ら,ガンマ線バーストの発生環境の観測に成功

京都大学と国立天文台らの研究チームは,ガンマ線バーストGRB 020819B(距離は約43億光年)とGRB 051022(距離は約69億光年)が出現した二つの銀河をアルマ望遠鏡で観測し,分子ガスからの電波を検出することに世界で初めて成功した(プレスリリース)。さらに,今回観測したガンマ線バーストが,驚くほど塵の多い環境で発生したこともわかった。

ガンマ線バーストはガンマ線の閃光で,宇宙で最も激しい爆発現象と考えられている。ガンマ線バーストは通常0.01秒から数分間継続し,現在では1日におよそ1回の割合で観測されている。ガンマ線バースト発生直後に観測される光を詳しく分析すると,数十億光年という非常に遠方で発生しているものが多いこともわかった。遠方宇宙の性質を探る道具としても,ガンマ線バーストは大きな注目を集めている。

研究チームは,ガンマ線バーストの出現した銀河(母銀河)に含まれるガスや塵の量を調べるために,2002年と2005年に発生したガンマ線バーストGRB 020819BとGRB 051022の母銀河をアルマ望遠鏡で観測した。その結果,二つのガンマ線バーストの母銀河で分子ガスと塵が発する電波の検出に世界で初めて成功した。

また,アルマ望遠鏡の高い解像度(視力)により,GRB 020819Bが属する銀河では分子ガスと塵の分布が大きく異なることもわかった。分子ガスは銀河の中心に多く分布しており,塵はガンマ線バーストが発生した場所に多く存在していたのことになる。そしてガンマ線バーストが発生した場所では,分子ガスに対する塵の量が通常の環境よりも10倍以上多くなっていた。ガンマ線バーストが発生した銀河における分子ガスと塵の空間分布を明らかにしたのもこの研究が初めて。