阪大,エピジェネティクスを生きたまま可視化できるマウスを作成

大阪大学のグループは,エピジェネティクス(DNA配列の変化を伴わないで細胞の個性が生み出される仕組み)の代表格であるDNAのメチル化をマウス個体の全身の細胞において生きたまま可視化することに成功し,このマウスを「メチロー(MethylRO:methylation probe in ROSA26 locus)」と命名した(プレスリリース)。

DNAのメチル化は,遺伝子の転写活性の制御に関わっており,それが様々な細胞で時々刻々と変化することにより,正常な発生やがん化の過程などにも関与している。ところが,これまではこの変化を静止画(スナップショット)としてしか捉えることができなかった。

この研究ではメチル化DNAを認識するMBD1(Methyl-CpG Binding Domain protein 1)たんぱく質のMBDドメインに赤色蛍光たんぱく質を融合した蛍光プローブを作製し,この遺伝子をジーンターゲッティング法によって全身で遺伝子発現することが知られているROSA26遺伝子座にノックインすることで,マウスの全身でこのプローブを発現した遺伝子改変マウスを開発した。

そしてこのレポーターマウスより得られた細胞を,独自に開発した低侵襲性ライブセルイメージング技術と組み合わせることによって,マウスの着床前初期胚発生過程及びES細胞の樹立過程の長期間ライブセルイメージングに成功した。さらに画像データの解析から,細胞分化が進行するに伴って特にセントロメアと呼ばれる遺伝子領域のDNAメチル化が上昇し,かつヘテロクロマチン構造が形成されていく様子を捉えることにも世界で初めて成功した。

このマウスの開発によって,DNAのメチル化がどのように変動するのかを生きたまま個体レベルで追跡し,評価することができるようになった。このことからメチローマウスは発生・幹細胞研究はもとより,抗がん剤などの創薬開発にも極めて有用であると考えられる。