東大ら,エビやカニの殻に含まれる「キチン」からバイオマスを生産可能な酵素を発見

東京大学と新潟大学,金沢大学の研究グループは、高速原子間力顕微鏡(HS-AFM)を用いて,キチンを分解する酵素(キチナーゼ)がキチンを分解する様子を世界で初めて可視化した。また,今回観察した2種類のキチナーゼ(キチナーゼAとキチナーゼB)は,それぞれキチンの表面を逆走しながら分解していることがわかった(プレスリリース)。

キチナーゼAとキチナーゼBがキチンの表面を移動する速度は,キチナーゼAが秒速71nm,キチナーゼBが秒速47nmであった。キチンを構成しているジアセチルキトビオースの長さが約1nmであることを踏まえると,キチナーゼAは1秒間に71回,キチナーゼBは1秒間に47回も反応している計算となる。

これまでに同研究グループが調べてきた多くのセルロース分解酵素(セルラーゼ)の速度が,1秒間に10回程度であった結果と比較すると,キチナーゼの分解速度はきわめて速いことがわかる。

キチンは,エビやカニなどの甲殻類の殻に含まれる物質として一般的によく知られており,その他にも,昆虫や軟体動物,菌類などに広く存在する。キチンは植物の細胞壁を構成するセルロースに次いで地球上に豊富に存在する生物資源だが,これまでほとんど利用されてこなかった。

キチナーゼが働く様子を視覚的に捉えたことによって,キチナーゼの理解が深まり,このような知見を基にキチンの分解酵素を上手に利用できる技術を開発できれば,キチンを新たな生物資源として利用できる可能性が高まる。