東北大,CNTにフラーレンが取り込まれた分子の「つるつる・くるくる」な構造を解明

東北大学の研究グループは,カーボンナノチューブ(CNT)にフラーレンがとり込まれた分子ピーポッドの固体状態の詳細な構造を解明した。筒状の分子内に球状の分子が,あたかも「さやえんどう」のような形で入った炭素性物質「ピーポッド」は,1998 年に初めて発見されて以来,その独特の分子形状や特異な物性に興味をもたれて研究されてきたが,原子の配列まで含めた精密な分子構造は未だ解明されていなかった。

研究グループらは,ごく最近,単純な構造を持つ分子ピーポッドを開発し,分子運動が活発な溶液状態で,中に取り込まれたフラーレンが,抜け出ることができないほど強固に捕捉されていること,またチューブ内部で回転していることを見いだしていた。

今回の研究で新たに,(1)通常の分子ならば動きを止めてしまう固体状態であっても,分子ピーポッドの内部にあるフラーレンが「くるくる」と回転していること,(2)分子構造を精密に解明できる高輝度 X 線回折による分析から,CNT分子の筒の内部には極めて「つるつる(平滑)」な曲面が存在することを明らかにした。

これは内部が「つるつる」であることが,内部のフラーレンが「くるくる」と回転するための重要な構造要素であることを明らかにした結果。「つるつる」の曲面をもつカーボンナノチューブ内部に,丸い球状分子を閉じ込めることで、固体状態でも「くるくる」と回る分子ベアリングをつくることができることを明示した。これは固体中でも滑らかに回転するナノサイズの機械(分子機械)の自在設計を可能とするために重要な基盤となる知見となるもの。