農業生物資源研究所(生物研)は,国際宇宙ステーション(ISS)の「きぼう」日本実験棟において,若田宇宙飛行士によるネムリユスリカ蘇生実験を実施した。
地上400km にあるISS で動物を用いた生物実験を行なう場合,生命維持装置と共に宇宙船で運ぶ必要があり,大きな負担となっている。そこで,休眠中の生物を用いることによって,その生命維持機材が簡略化でき,さらに無代謝状態の休眠をする生物を用いれば,生命維持装置を省略できる。
ネムリユスリカはアフリカの半乾燥地帯に生息する昆虫で,幼虫は完全な乾燥状態に耐えることができる。今回,宇宙環境でも乾燥に耐えるか,微小重力環境で遺伝子変異を起こさないかを調査した。
その結果,ネムリユスリカ乾燥幼虫が微小重力下においても再水和後に蘇生し,活動を開始する様子をISS からの映像で確認した。さらに再水和後,2週間が経過した幼虫の観察も実施し,いくつかの幼虫が蛹や成虫に変態したことを確認した。
これは,微小重力下においても乾燥状態から蘇生した昆虫の変態が可能であることが初めて確認したもの。今後は,ネムリユスリカ幼虫及び成虫を使った「微小重力下での営巣活動や飛翔行動」に関する実験が可能となる。
詳しくは生物研リリースへ。