名大ら,ワンステップの転写プロセスでCNTの微細パターンを形成する技術を開発

名古屋大学准教授の大野雄高氏らは早稲田大学教授の野田優氏らと共同で,ワンステップの転写プロセスにより,カーボンナノチューブ(CNT)薄膜の微細パターンを 10㎛ 以下の解像度でプラスチック上に形成する技術を開発した。

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この技術を用いて、微細グリッド構造を持つカーボンナノチューブ透明導電膜を作製し,従来問題であったシート抵抗と光透過率のトレードオフを超えて,性能向上を実現した。さらに,開発したワンステップパターニング技術により,マルチタッチ動作可能な静電容量式タッチパネルを簡便に製造できることも実証した。

この技術により,透明導電膜デバイスの製造工程において,真空プロセスやリソグラフィプロセスが不要となるばかりでなく,100%の材料使用効率でCNTを目的のデバイスに用いることが可能となる。

開発した技術は,CNTを浮遊触媒化学気相成長(FC-CVD)法により成長し,メンブレンフィルタにより濾過・捕集する。このとき,予めメンブレンフィルタ上にフォトリソグラフィによりレジストの微細パターンを形成しておくことにより,CNTはレジストの開口部のみに捕集される。このようにメンブレンフィルタ上に準備したCNT薄膜は容易に所望の基板に転写,パターンを形成することができるというもの。

従来,CNT透明導電膜のシート抵抗と光透過率の間にはトレードオフがあった。研究グループは,開発した微細パターニング技術を応用して,グリッド構造をもつカーボンナノチューブ透明導電膜を提案・実現し,トレードオフ問題を解決した。

提案するCNT透明導電膜は,従来の均一なCNT薄膜に加え,微細なCNTグリッドを付加した構造を持つ。この構造では,グリッドの開口部により光透過性を確保しながら,グリッド配線によりシート抵抗の低減が可能。

グリッドを付加した場合,従来の均一膜の場合に比べて,最大で 48%の低抵抗化を実現し,80%の透過率で53 Ω/sq.のシート抵抗を得た。グリッドの開口率を向上するとともに,グリッド配線の形状を工夫することにより,より高い透過率も実現できる。

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さらに,この技術を投影型静電容量式タッチパネルに応用し,CNT薄膜を用いたタッチセンサをプラスチックフィルム上に非真空・非リソグラフィプロセスで実現した。作製した CNT タッチセンサを用いて,文字を描く動作やマルチタッチ動作が可能であることも確認した。

詳しくは名古屋大学ニュースリリースへ。