情報通信研究機構(NICT)とルネサス エレクトロニクスは,将来の高速・低消費電力ネットワークの中核装置として期待される光パケット交換システムの実用化に不可欠な,現在のインターネットルータの宛先検索と同じ仕組みを実装した光パケットヘッダ処理装置を開発し,IPアドレスを利用した光パケット交換実験に世界で初めて成功した。
インターネットでは,宛先別振り分けのために光電変換を繰り返すことと,年々増大する情報量に対応するための高速交換処理の必要性から,ICT機器の全消費電力の7分の1を占めると言われているルータの省電力化が求められている。
これに対し,交換処理を光信号のまま行なうことで,高速・低消費電力を実現する光パケット交換システムの実現に向けた研究開発が進められているが,パケットを宛先別に振り分けるための宛先検索処理やパケットの種類・量を蓄積する統計情報蓄積処理,パケット伝送の経路制御などのネットワーク制御処理が複雑になるという課題があった。
今回開発した光パケットヘッダ処理装置はLSI技術と比べ,光パケットの宛先検索処理で20分の1,通信トラフィックの統計情報蓄積で5分の3の省電力を実現した2種類の高速・省電力LSIを搭載しており,光パケット交換システムの一層の省エネ化を実現した。インターネットのIPアドレスを利用した光パケット交換が可能となったことで,光パケット交換システムの実用化が加速することが期待される。
今後NICTは,ネットワークの経路制御機能について研究開発を進め,光パケット交換システムの機能向上を図る。ルネサスは,光パケット交換システムを組み込んだインターネットを高速かつ低消費電力で支える新しいLSIを開発していく。さらに,両者でIPv6インターネットへの実用化を視野に,宛先検索機能の高度化や経路情報処理の効率化による一層の省電力化を進める。
詳しくはこちら。