科学技術振興機構(JST)課題達成型基礎研究の一環としてケンブリッジ大学(当時所属、現 ユニバーシティカレッジロンドン 講師)研究者の紅林秀和氏らは、固体内に電流を流すことで電子スピンを制御できる「スピン軌道相互作用」で、新しい磁化制御メカニズムを発見した。
電子デバイスの低消費電力化と小型化のために、電子スピンを電流などで制御して磁石(磁化)の向きを変える新しいメカニズムの研究が世界中で盛んに行われている。その中で、スピン軌道相互作用を使った磁化制御のメカニズムが5年前に発見されたが、どのようなプロセスで発現しているのか、詳細は解明されていなかった。
今回、紅林研究者らを中心とした国際的共同研究チームは、希薄磁性半導体ガリウムマンガンヒ素(GaMnAs)に着目し詳細実験を行った結果、スピン軌道相互作用を使った磁化制御メカニズムに、これまであまり重要視されてこなかった電界による波動関数の変化、具体的には量子力学的位相に基づく効果が存在することを初めて見いだした。これにより、量子力学的位相がスピンメモリーなどを支える磁化制御に利用可能であることが実証された。
この新しい磁化制御メカニズムは、他の材料系にも応用できると期待される。それにより、今まであまり注目されていなかった量子位相に着目した材料探索そして材料物性評価という方向性が生まれる。量子力学的位相を利用して低電力で磁化を制御できる夢の材料が発見されれば、エレクトロニクスに革新をもたらすスピンメモリーなどへの応用が期待できる。
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