京大、ヒトiPS細胞から血小板を安定的に大量に供給する方法を開発

京都大学 iPS細胞研究所(CiRA)研究院の中村壮氏、教授の江藤浩之氏らの研究グループは、ヒトiPS細胞から自己複製が可能な巨核球を誘導することに成功し、大量に血小板を生産する方法を確立した。

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これまでにもiPS細胞から血小板をつくることはできていたが、輸血に必要なスケールで血小板を生産するのは困難だった。今回は血小板を生み出す細胞である巨核球に着目し、これまでよりも大きなスケールで、医療現場で使用できる量の血小板を生産することを可能とした。

この研究ではさらに造血幹細胞の細胞分裂に重要な働きをするBMI1 やアポトーシスを抑制するBCL-XL という遺伝子を利用することで、5ヶ月以上自己複製可能な巨核球をiPS細胞から誘導することが出来た。具体的には、iPS/ES細胞から2週間かけて誘導した造血前駆細胞に2種類の遺伝子(c-MYCとBMI1)を導入し、さらに2~3週間後に1つの遺伝子(BCL-XL)を追加で働かせることで、ほぼ無限に複製できる巨核球を作製することに成功した。

巨核球で強制的に働かせていた3つの遺伝子の働きを止めると、およそ5日後には巨核球が成熟し、血小板を生産した。この方法では直径10cmの培養皿(10mLの培養液)で巨核球を培養し、200~400万個の血小板ができた。つまり、25~50Lの培養液を用いれば輸血に必要な1,000億個の血小板を5日以内に用意できることになる。

今回の方法で生産した血小板はトロンビンの存在下で凝集するなど、基本的な血小板の機能を持っていました。ヒトから採血した直後の血小板と比べると反応が弱かったものの、保存した血小板やiPS細胞から直接誘導する方法で作成した血小板と比較すると強い反応を示した。従って、今回の方法で生産した血小板は十分に機能すると考えられる。

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