産総研,半導体型単層カーボンナノチューブを選択的に合成する技術開発に成功

産業技術総合研究所ナノチューブ応用研究センター,スーパーグロースCNTチーム 主任研究員の桜井俊介氏らは,半導体型単層カーボンナノチューブ(CNT)を選択的に成長させる技術を開発し,さらに半導体型単層CNTの選択率向上による薄膜トランジスタの特性向上を実証した。単層CNTは,丸まった時のグラフェンの方位や直径により,金属型と半導体型に電気的特性が分かれる。

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半導体型CNTはその高い特性から次世代のトランジスタ材料として注目を集める一方合成時に金属型のCNTが混ざってしまう問題がトランジスタの実現を妨げていた。今回,化学気相堆積(CVD)法によって単層CNT薄膜を合成する際に,合成前の金属触媒の状態を水蒸気によって調整することで,最大98 %の高い選択率で半導体型単層CNTを合成する技術を開発した。

CVD法は最も広範に用いられている単層CNTの合成法だが,今回は,成長するCNTの構造との関係が強い金属触媒微粒子の構造に着目し,これをCNTの成長前に炉内のガス雰囲気で調整する方法を考案した。すなわち,鉄触媒の微粒子に水分と水素の混合ガスを供給して触媒を調整し,混合ガス供給を停止した直後に原料である炭化水素ガスの供給を開始して単層CNT薄膜を合成する。

これにより合成されたCNT薄膜をチャネル層として用いた電界効果トランジスタは,半導体型単層CNTの選択率が高くなると特性が向上し,これまでより短いチャネル長で高いオン・オフ比とオン電流,移動度を示した。

今回開発した合成技術は,従来の合成後の分離技術と組み合わせることで半導体型単層CNTの選択率をさらに高められる可能性があり,単層CNTのトランジスタ応用への貢献が期待される。

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