日本原子力研究開発機構の任期付研究員 大山智子氏は,早稲田大学,大阪大学らと共同で,集束イオンビームを使うことにより,局所的に細胞接着性の高い部分を持つ生体に優しいプラスチックの開発に成功した。
医療や医療応用に向けたバイオ研究の先端技術である,医療マイクロマシンやlab-on-a-chip(ラボチップ)の開発では,細胞接着性をはじめとする特定の機能を自由に制御した生体親和性材料の創製がカギとなるが,生体親和材料は熱に弱いものが多く,微細な加工を精密に行なうことは困難であった。
研究グループはこの課題を解決するために,集束イオンビームを使った微細加工技術の最適化を行ない,熱に弱いプラスチックでも,60 nm幅の溝などの超微細構造を±10 nm以下の精度で加工することに成功した。さらに,加工と同時にダイヤモンド・ライク・カーボン様の表面状態を作ることで,局所的に細胞接着性の強弱を制御することが可能になった。
この成果は,量子ビームを用いた微細加工技術と材料改質技術の融合によって実現した新奇材料創製の一例であり,医療や医療応用に向けたバイオ研究における先端技術である医療マイクロマシンやlab-on-a-chip(ラボチップ)に用いる生体親和性材料の創製技術として今後の応用が期待される。
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