弘前大学,東北大学,東北特殊鋼は,JSTの復興促進プログラムが支援するプロジェクトで,振動発電やワイヤレスセンサの実用化と普及促進が期待される,高性能で量産加工性に優れた鉄基の磁歪材料を共同開発した。
磁歪材料とは,磁場を加えると僅かに変形する材料で,変形した割合が磁歪と呼ばれる。逆に,磁歪材料に力を加えて変形させると,材料内部の磁場が変化する逆磁歪現象が起こる。この逆磁歪現象による磁場の変化を,センサや振動発電に利用することが出来る。
普通の鉄でも20ppm 程度の磁歪を示すが利用は難しく,これまで実用化されているのは,超磁歪材料と呼ばれ1000ppm 以上の磁歪を示すターフェノールD(Fe-Dy-Tb;鉄-ジスプロシウム-テルビウム合金)や200ppm を示すガルフェノール(Fe-Ga; 鉄-ガリウム合金)などで,いずれも高価なレアメタルを含み,非常に高価なため,一般にはあまり普及していない。
そこで弘前大学古屋教授と東北大学准教授の山浦氏らが低コストで普及型の新しい磁歪材料とその応用デバイスの開発プロジェクトを立ち上げて開発を進めた結果,原料が比較的安価な鉄コバルト(Fe-Co)合金に,圧延や熱処理を施すことにより,超磁歪材料レベルに近い150ppm 程度の磁歪を得ることに成功した。
これによって,大幅にコストダウンした磁歪材料の提供が可能となり,機械や橋梁などの構造物・鉄道や自動車などの輸送機器・人や動物、風水流その他の自然の振動を利用した配線不要の分散型電源の普及や,自動車のハンドルのトルクを高精度に測定してパワーステアリングにフィードバックするトルクセンサなどへの応用が期待される。
更に,磁歪を利用したアクチュエータや,振動エネルギーの吸収能力を利用した制振防振装置への利用など,今後様々な分野で,省エネ,安全,利便性の向上に寄与するものと期待される。
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