産業技術総合研究所 ナノエレクトロニクス研究部門 連携研究体グリーン・ナノエレクトロニクスセンター特定集中研究専門員の近藤大雄氏らは,二次元ナノカーボン材料である多層グラフェンを利用した20nm幅の微細配線を作製し,低抵抗,高信頼性を実証した。
現在の大規模集積回路(LSI)では銅配線が用いられているが,配線の微細化を進めると,実効抵抗率が上昇したり,信頼性が低下したりすることが知られている。グラフェン配線は低い抵抗率と高い信頼性をもち,銅配線の代替として注目を集めている。しかし,グラフェン配線を数十nm幅にまで微細化しても,抵抗率などの性質を維持しているかどうかはこれまで不明であった。
今回、多層グラフェンは,サファイア基板上にエピタキシャルコバルト薄膜を形成し,その上にCVD法を用いて合成した7-15層の高品質なものを用いた。原料はメタンをアルゴンと水素で希釈したガスで,合成温度は約1,000 ℃。この多層グラフェンを別の基板に転写し,幅が4~20 µm,厚さが2~5 nm程度のテスト配線を作製した。グラフェン配線の抵抗率の分布をに示す。さらに,塩化鉄を層間に入れるインターカレーション技術の条件を最適化したところ,最も低い抵抗率は,銅配線の抵抗率に近い,従来より低い4.1 µΩcmを達成した。
この微細配線の抵抗値は,細線化前の数マイクロメートル幅の配線とほとんど変わらず,また,真空中250 ℃で107 A/cm2の電流を100時間以上流しても断線せず,銅よりも高い信頼性を持つことが分かった。
この微細幅の多層グラフェン配線は,LSI配線への適用が期待される。今後,10 nm以下の幅の多層グラフェン配線についても低抵抗・高信頼性を実証するとともに,多層グラフェンやカーボンナノチューブを利用した3次元配線を開発し,配線幅が10 nm程度まで微細化される2020年頃にLSIへの適用を目指す。
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