NIMS、粘土鉱物による二酸化炭素の「呼吸現象」を発見

物質・材料研究機構国際ナノアーキテクトニクス研究拠点若手国際研究センターICYS-MANA研究員の石原伸輔氏らは、ハイドロタルサイトと呼ばれる粘土鉱物に含まれる炭酸イオン(CO32-)が、空気中の二酸化炭素(CO2)と数日レベルの早い交換を繰り返しており、あたかも粘土鉱物が二酸化炭素を呼吸しているような新現象を発見した。

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13C同位体ラベルされた炭酸イオン(13CO32-)を含むハイドロタルサイトを用いることにより、ハイドロタルサイト中の炭酸イオンが空気中の二酸化炭素と数日から一週間程度で入れ替わっていることを初めて観測した。従来の炭素循環に対する考え方を大きく変える物質群を発見したことになる。

空気中の二酸化炭素に含まれる炭素は98.9%が12Cで構成されていることから、赤外分光法により13Cと区別が可能。ガス吸着実験の結果から、ハイドロタルサイトの層間には、二酸化炭素のみを約4cc/gまで選択的に吸着するサイトが存在することがわかった。興味深いことに、二酸化炭素よりも分子径の小さい窒素ガスは、この層間に入ることができない。理論化学(第一原理計算や密度汎関数理論計算)や核磁気共鳴分光法を駆使することで、ハイドロタルサイトに関する二酸化炭素の吸着・交換・脱離のメカニズムについて詳細な知見を得ている。

ハイドロタルサイトに類似した粘土鉱物は天然にも存在することから、この成果は炭素循環に関連する地球温暖化や炭素年代測定法のより正確な理解につながると考えられる。また、ハイドロタルサイトの構造最適化により二酸化炭素の吸着量や交換速度を向上させることで、効率的な二酸化炭素の分離膜や二酸化炭素の還元触媒担体などの次世代材料が開発できると期待できる。

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