東工大ら,超伝導転移温度を変化させる仕組がガラガラ動く原子にあることを解明

東京工業大学の元大学院生(現 物質・材料研究機構 研究員)磯野貴之氏,フランス原子力庁らの共同研究グループは,β型パイロクロア酸化物における圧力を加えていった時の超伝導転移温度の特異な変化が,ラットリングと呼ばれる物質中の原子の非調和振動によって統一的に理解できることを明らかにした。

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圧力により非調和性が増大すると,転移温度を決定する二つの因子のうち「伝導電子と格子との相互作用」は増強し,もう一方の「格子振動のエネルギー」は減少することが高圧下磁場中比熱の実験で明らかになった。

前者は超伝導転移温度を上昇させ,後者は減少させる効果であり,これら二つの相反した効果の競合により,転移温度がある値で極大値を取ることがわかった。これによりβ型パイロクロア酸化物における一見系統性のない超伝導転移温度の加圧による変化を統一的に理解できることを突き止めた。また,この成果は非調和性の大きさを最適化することで,既存物質よりも数倍高い転移温度をもつ新たな超伝導体が実現可能であることも示唆している。

この成果は,世界的に見ても稀な高圧下精密比熱測定システムを用い,東京大学物性研究所のグループが育成した高純度単結晶試料を用いて測定した結果得られた。これにより,これまでほとんど知られていなかった非調和振動が超伝導に与える影響を解明するための重要な知見を得ることに成功した。この成果は超伝導転移温度の上昇に向けた新たな指針となるものであり,より高い転移温度をもつ超伝導の発見が期待されるとしている。

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