理研、脳発達過程における「臨界期」開始の新理論を提唱

理化学研究所は、脳が経験などによって変化しやすい「臨界期」と呼ばれる発達段階の開始を抑制性神経細胞からの入力の増強と関連づけて説明する新しい理論を提唱した。

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臨界期開始前の発達初期段階では、脳神経回路は、外部からの刺激に依存しない自発的な神経活動によって形成される。しかし、成長に伴って環境や経験などの外部からの刺激の影響を受けて脳神経回路の形成が進むようになる。この発達過程と臨界期開始の関係はこれまで知られていなかった。研究チームは、過去の研究知見を参考に検討した結果、抑制性神経細胞からの入力が増強すると脳神経回路の自発的活動が低下し、環境や経験といった外部由来の感覚刺激に応じた神経細胞の活動が脳神経回路の組み替えを決定するようになり、この切り替わりをきっかけに臨界期が始まるという理論を提唱した。

この理論を裏付けるために、遺伝子改変マウスを用いた電気生理実験を行ったところ、臨界期開始時の抑制性神経細胞からの入力の増強が視覚野の神経細胞の自発活動を選択的に減衰させることを示した。

今回の理論では、抑制性神経細胞からの入力の増強に伴う臨界期の開始ばかりでなく、従来の仮説では説明が難しかった臨界期開始前の視覚経験に応じた脳神経回路の組み替えも同時に説明できる。さまざまな脳機能に関わる臨界期が脳の自発的な活動の低下に伴って連鎖的に起こるとすると、これによって脳の持つ階層構造の発達が説明できる可能性がある。また、臨界期開始のメカニズムを解明し脳の発達過程を理解することは、将来のより効率の良い教育プログラムの提言へつながると期待できる。

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