京都大学は,微細な半導体の結晶である半導体量子ドットを用いた太陽電池で課題であった,電圧が低下する原因を突き止めた。
量子ドット太陽電池は理論的には40%以上という高い変換効率が期待されるため注目されている。例えば,結晶 シリコン太陽電池に,より低いバンドギャップエネルギーを持つ量子ドットを組み入れることで,低エネルギー光を吸収し電気エネルギーとしての利用が可能となる。このような新しい光吸収帯を用いた量子ドット太陽電池は中間バンド型と呼ばれ電流は増加するが,逆に電圧の大幅な低下が問題で,高効率化の妨げとなっていた。
今回,結晶シリコン太陽電池に導入する材料に,ゲルマニウム量子ドットを選び,太陽電池特性を幅広い温度範囲で系統的に調べた。その結果,電圧の低下につながる大きな電荷の損失を引き起こすことなく,結晶シリコン太陽電池に導入できることが分かった。これは,ゲルマニウムの材料特性上,ほかの材料では起こっていた電荷の再結合による損失が抑制できたためと考えられる。
さらに,電圧が低下する本当の原因は,これまで言われ ていたように導入する量子ドットの材料特性や組み合わせによって起こるのではなく,電荷が光吸収によって励起される(エネルギーを高められる)前に量子 ドットから取り出されて,元の電圧が維持できなくなって起こることを突き止めた。
この研究成果によって,量子ドットを用いた高効率化技術の妨げであった電圧の低下を引き起こす電荷の損失を伴わずに量子ドットを導入する手法を見いだ し,その原因が明らかになった。今後は,この知見を活用した電圧の低下を抑制する実証研究が加速し,近い将来,量子ドットの結晶シリコン太陽電池への高効率化技術の適用や,中間バンド型をはじめとする高効率な量子ドット太陽電池が実用化されることが期待される。
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