東北大,数センチメートルの結晶粒を得られる新しい熱処理プロセスを開発

東北大学の研究グループは,新しい熱処理プロセスによる結晶粒の異常成長現象を見出した。銅系形状記憶合金を用い,900℃以下の温度域で冷却・加熱のサイクル熱処理を行なうことにより,数センチメートルの結晶粒を得ることに成功した。

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通常,金属材料は原子が周期的に配列した結晶であり,方位の異なる多数の結晶粒からなる集合体(多結晶体)である。結晶粒の境界面,すなわち,結晶粒界はエネルギーが高く不安定なため,原子の移動が可能な高温では,材料内部における結晶粒界の割合を減らすために,ゆっくりとした粒界の移動による結晶粒 の粗大化が起こる。しかし通常の結晶粒成長は,粒径がサブミリ(0.1mm)程度に達すると著しく遅延することが知られている。

最近,研究グループは従来使用されている合金系(TiNi)に比べ格段に製造しやすい新型銅系形状記憶合金を開発し,その超弾性特性を利用した巻き爪矯正器具を商品化した。この銅合金の超弾性特性は,材料のサイズに対する結晶粒の大きさが大きいほど優れた性質を示すため,数センチもの大型部材への適用を考える場合には,結晶粒もそのレベルまで大きくする必要がある。しかし,高温保持による通常の結晶粒成長法では限界があり,短時間で簡単に結晶粒を粗大化さ せる手法が切望されていた。

研究グループは,今回開発した手法を用いることで,通常の結晶粒径より1~2桁程大きい数センチメートルもの結晶粒径を得ることに成功した。写真は直径2cmの棒を結晶粒が貫通しており,このサイズの材料においても良好な超弾性が得られることを確認している。これにより,数センチメートルの断面サイズ(例えば,棒材では直径)を有する部材として銅系形状記憶合金を利用することが可能になり,工業製品などへの応用が期待できる。

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