宇宙航空研究開発機構(JAXA)は,「超薄膜高高度気球の飛翔性能試験(BS13-08)」を実施し,到達高度53.7kmを記録した。この記録は,平成14年5月に当時の文部科学省宇宙科学研究所が放球した超薄膜高高度気球(厚さ3.4μmのポリエチレンフィルム製、満膨張体積60,000m3(直径53.7m))の到達高度53.0kmを越えるもので,無人気球到達高度の世界記録を更新したこととなる。
今回の実験は,新たに開発した世界で最も薄い気球用フィルムである厚さ2.8 μmのポリエチレンフィルムを用いて製作された超薄膜高高度気球の飛翔性能試験を目的として実施したもので,JAXAと北海道大樹町の連携協力拠点である大樹航空宇宙実験場より9月20日午前5時22分に放球した。
この気球は満膨張体積80,000m3(直径60 m)の超薄膜高高度気球で,およそ毎分250mの速度で上昇し,放球2時間42分後に大樹航空宇宙実験場東南東約130kmの太平洋上において高度53.7kmに達した。その後8時15分に指令電波により気球を引裂いて破壊し,気球及び制御機器部は大樹航空宇宙実験場東南東約150kmの海上に緩降下した。
この実験により,厚さ2.8μmのポリエチレンフィルムを用いた超薄膜高高度気球の設計・製作・放球の一連のプロセスの妥当性を実証することができた。今後は,かつてのMT-135ロケットに代わる飛翔体として,より幅広い中間圏下部(高度50~60km周辺)における大気科学等の「その場観測」の実現に取り組んでいく。
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