原研、ウラン化合物の超伝導前駆状態における電子ひずみの原子レベルでの測定に成功

日本原子力研究開発機構先端基礎研究センター重元素系固体物理研究グループグループリーダーの神戸振作氏らは、ミシガン大学教授のRussell Walstedt氏と共同で、ウラン化合物超伝導体において極低温で現れる電子状態のひずみを原子レベルで精密に測定することに成功した。

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ウラン化合物超伝導体URu2Si2には、極低温(17.5K(約-256℃)以下)のある領域で現れる、25年来解明されていない未知の状態がある。超伝導転移はさらに低温(2K(約-271℃)以下)で起きるため、この状態は超伝導前駆状態と考えられる。この化合物の電子状態は通常の状態では4回対称だが、未知の状態への転移に伴い4回対称から2回対称にひずむことが報告されており、この2回対称状態を詳細に知ることが未知の状態解明への一つの鍵となっていた。従来、2回対称状態の探索には、試料全体に特定方向の磁場をかけてその応答から磁気異方性を見積もる、という方法がとられていた。しかし、この方法では測定の精度が試料のサイズに依存するという難点があった。

これに対して、核磁気共鳴(NMR)法という、原子一つ一つを区別して測定できる手法を用いることで、試料サイズに関係なく精密な磁気異方性の測定を行うことに成功。得られた結果は、この未知の超伝導前駆状態が磁気状態としてもこれまで観測されたことのない全く新しい電子状態であることを示唆しており、磁気に誘発される超伝導の起源の理解を大きく推進すると考えられる。

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