理研、超伝導体で挟んだ強磁性体中を長距離流れるスピン流の原理を発見

理化学研究所柚木計算物性物理研究室准主任研究員の柚木清司氏と基礎科学特別研究員の挽野真一氏ら研究チームは、2層の強磁性体をs-波超伝導体で挟んだ「強磁性ジョセフソン接合」を考案し、電子スピンの向きが平行な電子対(スピン三重項クーパー対)によるスピンの流れ(スピン流)が、強磁性体中を長距離にわたって伝搬することを理論的に見いだした。

磁化の方向が違う2層の強磁性体を、電子スピンの向きが反対になって対を形成して超伝導状態になるs-波超伝導体で挟んだ強磁性ジョセフソン接合を考案し、強磁性体中を流れるスピン流を理論的に調べた。

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その結果、スピン流は電圧降下することなく数十ナノメートルから数百ナノメートルにわたって強磁性体中を伝搬することが分かった。これまでのスピン流の典型的な伝搬距離は10ナノメートル以下であるため、数百倍も伸びたことになる。また、この長距離伝搬は、近接効果により強磁性体中に誘起されたスピン三重項クーパー対によって起きたことを明らかにした。

さらに、強磁性ジョセフソン接合では、電荷の流れ(電流)が実質的にゼロになるにも関わらず、スピン流の減衰は1桁程度であり、十分に観測可能な値であることも分かった。この結果は、スピン流と電流を実質的に分離できることを示唆している。

今回の発見は、物性物理学における新しい現象であり、研究の新ステージを提供すると期待できる。

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