名大,安全・安価なマグネシウム超分子触媒の開発と光学活性リン化合物の触媒的不斉合成に成功

名古屋大学 大学院工学研究科 化学・生物工学専攻教授の石原一彰氏らの研究グループでは,JST・CRESTの研究の一環として,『予め分子設計しておいた数種類の小分子をフラスコ内で混ぜ,分子が自発的に集まって機能化する自己組織化を利用し一種類の超分子錯体に一気に収束させて,酵素機能を凌駕するナノサイズの高機能触媒を設計・開発する』ことを目的に研究を行なっている。

同研究グループは,ミネラルとして体内の必須元素でもあるマグネシウムイオンと入手容易で安価な光学活性ジオールを2:3のモル比で混ぜるだけで自己組織化し,一種類の超分子錯体に収束することを見出した。さらに,この超分子錯体(3or4)を不斉触媒として、不飽和カルボニル化合物への有機リン化合物の付加反応を試したところ,用いる基質に応じて,高選択的に光学活性β-ホスホリルエステルや光学活性α-ヒドロキシホスホン酸エステルが合成できることがわかった。

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光学活性β-ホスホリルエステルは様々なP,N-配位子へと合成変換できるため,新たな不斉触媒の開発に繋がる。また,光学活性α-ヒドロキシホスホン酸エステルは,加水分解酵素であるプロテアーゼやエステラーゼの阻害剤合成の鍵中間体となることが知られているため,新薬の開発への貢献が期待される。この触媒反応はグラムスケールでも再現性よく進行し,簡便な実験操作で実施できるため,極めて実用性が高い。

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