月刊OPTRONICS 特集序文公開

レーザーフュージョンエネルギー実現に向けた技術の統合

1.レーザーフュージョンエネルギー実現への期待

ものがその場所にとどまろうとする慣性の力によって,圧縮されたプラズマは,ほんの一瞬だけその場所から離れない。この慣性の力を利用して,高密度のプラズマを閉じ込め核融合発電を行う方式が慣性閉じ込め方式である。この方式では,外部から圧力をかけてプラズマをできる限り狭い領域に圧縮し,高密度状態を実現することで,一定時間における核融合反応の数を多くすることが期待されている。

外部から圧力をかける方法として,レーザーやイオンビーム,ガスガン,レールガンを用いた複数の方式が研究開発されてきた。この中でも,レーザー照射によって生み出される圧力でプラズマを高密度状態に圧縮するレーザー核融合が,将来の核融合炉として最も有力とされている。

強力なレーザー光を物質に集光照射することで,物質の表面がレーザー光を吸収し,吸収した部分がプラズマとなって噴出(アブレーション)する。この噴出によるロケット効果で圧力を発生させることが可能である。強力なレーザーによって発生する圧力は非常に大きく,レーザーを使うことで太陽内部の圧力を再現することができる。

レーザー核融合は,図1 のように燃料を高出力のレーザーで圧縮・加熱し,瞬間的にエネルギーを生み出す。レーザーを繰り返すことで,その反応を連続的に発生させる手法である。レーザーの繰り返し数を一定に保つことでベースロード電源として活用可能であるが,秒単位でレーザーの繰り返し数を調整できるため,負荷変動に対応できる特徴も持つ。運転サイクルを制御することで負荷変動に対応できるという優れた特性から,レーザー核融合発電はベースロード電源としてだけでなく,日中や夏の暑い日,冬の寒い日などエネルギー需要が局所的に高まる時に必要とされるミドル電源やピーク電源としても活用が期待されている。

現在,世界のミドル電源やピーク電源は,天然ガス,LPガス,石油など従来の化石燃料を用いた火力発電に大きく依存している。日本の火力発電は変換効率が高く,国際的にも非常に高い水準で環境負荷を抑えた運用がなされている。しかし,2050年のカーボンニュートラル実現には,発電プロセスの中で二酸化炭素を排出しない電源が必要とされる。レーザー核融合発電は,現在のピーク電源である火力発電の代替としてもその実用化が期待されている。

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