NIMS,長波長に対応したペロブスカイト材料を開発

物質・材料研究機構(NIMS)の研究グループは,800nm以上の長い波長の太陽光を利用できるペロブスカイト材料を,高品質に作製する新しい方法を世界に先駆けて開発した(ニュースリリース)。

従来の方法と比べ,太陽光に対する感度が40nm広く,高い短絡電流と開放電圧を有しており,ペロブスカイト太陽電池の高効率化への新たなアプローチとして期待される。

現在のペロブスカイト太陽電池は,太陽光の吸収範囲が短い波長側に偏っており,より高い変換効率を目指して,長い波長の領域も利用できる材料の開発が課題となっている。

そこで,長波長領域の光も吸収できる2種類のカチオン(MAとFA)を混合したペロブスカイト材料((MA)xFA1xPbI3)の開発が各研究機関でなされているが,この2種類のカチオンは,混合比率を制御しにくく,また結晶温度の制御が難しいという欠点がある。さらに混合結晶相となりやすく,単一結晶相の高純度ペロブスカイト材料の有効な作製方法はいまだに確定されていなかった。

研究グループは,これらの問題を解決する新しい混合カチオン系のペロブスカイト材料の作製方法を開発した。まず,作製温度を変えながら純粋な単一結晶相の前駆体FA1-xPbI3材料を作り,この材料をMAI(ヨウ化メチルアンモニウム)と反応させた。

この方法で得たペロブスカイト材料(MA)xFA1xPbI3は単一結晶相であり,蛍光寿命が長いことにより,ペロブスカイト材料中の電子再結合が少なく,電子寿命が長いことが判明した。

この材料を用いた太陽電池は従来型のペロブスカイト材料(MA3PdI3)より太陽光に対する感度が40nm広く,840nmまで伸びたため,同じ条件で作製したMAPbI3を用いた太陽電池より短絡電流が1.4mA/cm2高くなった。

研究グループは今後,2種類のカチオンの比率を調整することにより,太陽光の広い波長領域を利用できる高品質のペロブスカイト太陽電池の開発を目指すとしている。

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