豊橋技術科学大学らはナノフォトニクス理論に基づき,ハードディスクドライブ(HDD)の記録密度を10倍にすることができる「熱アシスト磁気記録方式」(HAMR)を実現するナノヒーターを開発した(ニュースリリース)。
現代のデジタル化社会では電子情報が急速に増大しており,現行の消費電力のままでハードディスクの記録密度を大幅に向上させる技術開発の重要性が益々高まっている。
この記録密度を大幅に向上させる次世代のハードディスクの記録方式として,熱アシスト磁気記録方式がある。この方式では直径10nm程度の領域を局所的に加熱して磁気記録を行なう必要がある。今回,GaAs基板を微細加工した微小光熱源素子を開発した。その結果,部品数が少ない形状で,加熱領域を10nm程度に絞れる熱源が初めて実現された。
研究グループは,ナノフォトニクス理論に基づき,HAMR用微小光熱源の開発を実証した。ナノヒーターの作製と試作技術の研究開発はイノバステラが担当,リングレーザーと金ニードルによる動作のシミュレーションは福岡工業大学,GaAs基板上に所定の量子ドット層を形成する技術は情報通信研究機構が担当,3次元シミュレーションと素子動作の実証・測定は米カーネギーメロン大学が担当し,素子の後加工については多くの協力会社と共同で進めたという。
安全,安心な社会を実現し,さらに便利で豊かな生活を実現するためにもネットトラフィックの維持とその向上は重要となる。世界では 2030年には40億個を超えるHDD用ヘッド需要が見込まれ,そのほとんどはHAMR方式と予想されることから,極めて大きなマーケットとなることが予想されている。
その頃には書き込みが速く書き換えも容易で単位容量あたりのコストが低いHDD,読み出し速度の速いSSD,信頼性が高くオペレーションコストの安い光ディスクというように棲み分けが進んでいると想像されるという。
研究グループでは,ナノヒーターは全く新しい微細光熱源としてバイオ・ライフサイエンスや創薬補助,微細加工などの分野への応用が検討されており,新しいマーケットの創造にも寄与することが可能だとしている。