【OPIE’19】「オンリーワン」技術を見に行こう

光技術展示会「OPIE’19」(会期:4月24日~26日,会場:パシフィコ横浜)では,他にないような技術を生で見聞きすることができる出展品を直接目にすることができる。実際に製品を目にし,担当者と話すことで得られる情報はカタログのそれとは別物と言える。ここでは特に珍しい,または技術的にトップレベルの製品を取材した。

【黒を極める】
オーシャンフォトニクス(ブースNo.L-24)は,光の反射率を極限まで抑えた,最も黒いという英surrey nanosystems製のコーティング材「VANTABLACK」を展示している。その反射率はわずか0.036%と,この製品をコーティングした立体物がまっ平な黒い平面に見えるほどに黒い。人工衛星に搭載する黒体校正システムの一部として開発された経緯があり,実際に人工衛星にも採用されているという。

可視光だけでなく紫外や赤外域でも反射率が低い特性は,原材料の垂直配向カーボンナノチューブ(CNT)によるもので,コーティングの厚さは20μm。真空蒸着によって製膜するため,コーティングが可能な材料は430℃のプロセス温度に耐えられるという条件がある。これに対しスプレー方式の「VANTABLACK S-VIS」は280℃で焼結するため,より低い温度の材料が使用できる。ただし,膜厚は60μm,反射率は0.2%以下となる。

CNTは人体への影響が懸念されるため,人の手が触れたり摩擦のあるような個所には使えないのと,施工はイギリスで行なわれるため納期の問題等はあるが,そのユニークな性能は宇宙天文分野のみならず,高精度な測定器やその光学系など,多岐にわたるものと思われる。

一方,光陽オリエントジャパン(ブースNo.D-38)は,長年にわたって供給してきたカメラ用の反射防止材「ファインシャットSP」を改良した新製品「ファインシャット極」を展示する。この製品は微細発泡ポリウレタン製で,従来の微細孔による構造に平行な溝を加えた遮光溝形状により光の吸収率を250nm~2000nmの範囲において1%以下に抑えた。同様の製品にフェルトを使ったものがあるが,フェルトは近赤外域で反射率が高いという弱点があった。

さらにフェルトは摩擦によって起毛が落ちることがあり,精密機器には使用できなかったが,この製品は摩擦に強く,人の手に触れる場所でも使用できる。裏面に接着テープのついたシート状で提供され,厚みはポリウレタン層が0.37mm,接着テープが0.05mmまたは0.12mmとなっているほか,カスタムに応じた形状にカットしての販売することも可能だという。Amazonを利用した販売も行なっており,価格は16000円(税込み)となっている。

【防振を極める】
ヘルツ(ブースNo.D-25)は昨年,第35回神奈川工業技術発明大賞を受賞した超低周波防振システム「G-Zero」の展示を行なっている。この製品は究極の防振性を求めて開発されたもので,固有振動数は0.25Hzと,通常の装置の1/4を達成しており,これは研究開発向け防振装置として最高の性能だという。しかも,この装置は電気を使用したアクティブ方式ではなく,機械機構のみで構成されており,電気ノイズを発することもない。

応用として,ナノテクノロジーやバイオテクノロジー,宇宙天文,精密機器輸送などを想定しているほか,センサーの開発や校正,原子時計などの超精密分野でも実績があるという。この装置は搭載板寸法によって,400×450mmから1000×1200mmまで5種類の装置をラインナップしている。

【使いやすさを極める】
豊田合成(ブースNo.E-36)は,モジュール化した深紫外LED光源を紹介している。深紫外LEDは殺菌分野などで水銀光源の代替として期待が高まっているが,一方で殺菌装置を扱う医療機器メーカーや水道関連メーカーなどは,LEDを単体で購入しても適切な放熱や防水対策の難しさから,性能を十分に活かせないことがあった。

そこで同社は深紫外LEDをカバーやヒートシンクと組み合わせてパッケージングしたモジュールとしてサンプル販売を開始した。基本的な製品は小型流水殺菌用として25×25×29.2mmの防水構造としたもので,波長は280nmを中心として275nm~285nmまで対応する。LEDの数を増やして高出力化したものにも対応するほか,流水管に取り付けて水殺菌装置としたカスタムにも応じる。なお,水殺菌装置は需要次第では製品化も検討したいとしている。

【色を極める】
日置電機(ブースNo.B-4)は,世界初となるRGBレーザー専用の光測定器「TM6102,TM6103,TM6104」を展示し,レーザープロジェクターを使ったデモを行なっている。レーザープロジェクターはもちろん,HUDやHMDなどレーザーを光源とした多種多様なディスプレーが実用化されているが,こうしたディスプレーの画像を正しく評価,測色する装置はこれまでなかった。

同社はRGB各色のレーザー光の重心波長と光パワーを計測して色度と測光量を算出する「分離波長方式」を開発することにより,RGB重心波長測定分解能0.01nm,色度xy座標出力分解能0.00001を実現し,正確なレーザー測光を可能にした。これにより,正しいホワイトバランスを求めることができる。

装置のシリーズはレーザーディスプレーの光学系各所(投影面,スクリーンおよびバックライト,発光モジュール)で使用できる上記の3タイプとなっている。同社は装置の開発に,これまでの電球にに代わってレーザーを用いた単色放射照度評価装置を産総研と開発するなど,高い精度を実現するためのバックグラウンドから整備したという。

【職人技を極める】
岡本光学加工所(ブースNo.B-13)は,国立天文台(ブースNo.C-33)らが建設を進める大型光学望遠鏡「TMT」の主鏡の研磨を行なうなど,光学素子の加工において優れた技術を保有し,日本の光学業界を支えてきた。同社はモットーとして依頼された仕事は断らず,とにかくやってみるとしており,これまで天文光学に限らず,様々な難加工を実現してきた。

現在は同社でも加工装置を使うことが増えたそうだが,それでもまだ職人の手がなければできない仕事も多いという。同社はテレビ番組で披露した手仕事による究極の真球などの展示を通し,その技術力をアピールする。なお同社は5月1日より有限会社岡本光学加工所より株式会社オカモトオプティクスへと社名変更し,よりグローバルな体制へと刷新する。

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