富士キメラ総研は,フレキシブル/有機/プリンテッドエレクトロニクス関連の世界市場を調査し,その結果を「2018 フレキシブル/有機/プリンテッドエレクトロニクスの将来展望」にまとめた(ニュースリリース)。
それによると,対象としたフレキシブル/有機/プリンテッドエレクトロニクス関連製品の2017年の市場は3兆3,473億円を見込む。中小型AMOLEDの構成比が大きく60%弱を占め,2030年でもほぼ同程度の構成比となり市場への影響が大きい。また,大型AMOLEDやタッチセンサーも規模が大きく,今後は,有機EL照明や導電性テキスタイル,有機薄膜太陽電池,色素増感型太陽電池/ペロブスカイト太陽電池,生体電位センサーなどが伸びると予想。2030年の市場は8兆8,569億円を予測する。
フレキシブル採用率は,RFID,有機メモリー,圧力センサーシート,生体電位センサー,有機イメージセンサーシート,有機薄膜太陽電池がフィルム基板上に製造されるため,全量がフレキシブル製品なほか,導電性テキスタイルは柔軟性を持つ繊維に導電性を付与するため全量がフレキシブル製品となる。また,市場規模の大きい中小型AMOLEDが全体市場に多大な影響を及ぼしており,2017年にSamsung Displayがフレキシブル製品向けの設備増強を行なったことによりフレキシブル化が進んでいる。
それに伴い今後もフレキシブル採用率は上昇が続くとし,中小型AMOLED以外にも電子ペーパーや有機EL照明がフレキシブル採用率の上昇をけん引するとみる。中小型AMOLEDは2030年に86.4%,電子ペーパーは48.3%,有機EL照明は96.7%とフレキシブル採用が大きく進むとする。
プリンテッド採用率は,有機メモリー,有機イメージセンサーシート,フレキシブル電池が全量プリンテッド採用製品だが,構成比が大きい中小型AMOLEDのプリンテッド採用率が低いため,全体でも10%台にとどまっている。2020年頃までは中小型AMOLEDの伸びが大きいため,他のプリンテッド採用製品が伸びるものの,全体のプリンテッド採用率は押し下げられるとみる。
将来的には,印刷で製造するセンサーデバイス,太陽電池などが伸びることから,プリンテッド採用率の上昇を予想する。特に,2020年代前半よりウェアラブル機器の発展により,複合センサーや衣服型ウェアラブル機器との一体型センサーへの印刷製造が増えるため,センサー類を中心にプリンテッド化の進展が期待されるという。
また,IoTの進展に向けて,デバイスの高機能化,コストダウンを目的としてプリンテッド技術の導入が進むとみており,2020年代後半にプリンテッド採用率の大幅な上昇が期待されるとする。プリンテッド採用率は2024年頃より上昇に転じ,2030年では20.5%を予想する。
市場は現状ではディスプレーを中心に構成されているが,今後はIoTを進展させるウェアラブル/ヘルスケア分野の機器や,流通・小売分野の高機能タグや在庫管理ツール,自動車分野のセンサーなどの採用が増えるとみる。
ウェアラブル/ヘルスケア分野は,現状はスマートウォッチに採用されている中小型AMOLED,PMOLEDなどのディスプレイが大部分を占める。今後は,肌に貼るタイプなどの生体電位センサーや,心電・筋電位計測用ウェアラブル型生体センシング機器の電極部に使われる導電性テキスタイルなどが伸びるとみる。
流通・小売分野は,物流タグで使われるRFID,電子棚札で使われる電子ペーパーが大部分を占める。今後は,RFIDと電子ペーパーに加えて,タグ向けの高機能化手段として有機メモリーやフレキシブル電池,商品の在庫管理や顧客の行動分析を可能にする圧力センサーシートや有機イメージセンサーシートの伸びを予想する。
自動車分野は,PMOLEDや有機EL照明が中心。今後,着座センサーやシートベルトの圧力検知に使用される圧力センサーシート,車内ディスプレーとしてフレキシブル化された中小型AMOLEDの伸びが注目されるという。また,有機EL照明は,自動車テールランプ採用や,ADASにおける外部への表示機器などで2030年までに大きな伸びが期待されるとしている。
関連材料の世界市場では,プリンテッドエレクトロニクス関連材料,有機EL関連材料,基板を対象とした。現状は3Dプリンター用造形材料,蒸着型有機EL発光材料,円偏光板などの構成比が大きいという。
2020年までは引き続き3Dプリンター用造形材料の構成比が高くなるとみており,中小型AMOLEDや有機EL照明のフレキシブル化に関わるポリイミドワニス・フィルム,フレキシブルガラスも伸びるとみる。将来的にはフレキシブルデバイスの高機能化や低コスト化に寄与する印刷材料として,導電性ナノインクや有機半導体材料,塗布型有機EL発光材料などの伸びを予想する。