東京大学の研究グループは,中国科学院のグループ,高エネルギー加速器研究機構(KEK)の研究グループと共同で,ホウ素の単原子シート「ボロフェン」の中に,「質量ゼロ」 粒子を発見した(ニュースリリース)。
これまで,質量ゼロの粒子は炭素の単原子シート「グラフェン」に存在することが知られており,固体物理の中心テーマとして研究されてきた。また最近では,この粒子は電気伝導を担うため,エレクトロニクスの新たな動作原理に従うものとしても注目されている。
これまでの研究から,単原子シートにおける質量ゼロ粒子の生成には蜂の巣状の原子配列が必要と考えられていた。しかしながら発見されたばかりの単原子シート「ボロフェン」の電子状態を光電子分光法によって直接観測したところ,蜂の巣状の配置を持たないのにも関わらず,同様の質量ゼロ粒子が生成することがわかった。
この粒子はまた,シートを支える基板の影響により性質の異なるペアを形成して存在していることも発見した。この成果は,新材料「ボロフェン」が示す新奇な性質の発見のみならず,次世代材料として注目されている単原子シートに対して新しい物質設計理念を提供するもの。
今後,この研究成果を元に,質量ゼロ粒子による多種多様な原子シート物性の発見と工業利用への促進が期待され るとしている。