複合型光ファイバーを応用した低侵襲レーザー治療器―OKファイバーテクノロジーが開発

複合型光ファイバーは,レーザー光と画像の並列伝送を可能にするもので,レーザー導光用ファイバーや画像伝送用ファイバーなど異なる用途のファイバーを一体同軸化し,一つの光学系で伝送する。これにより,光軸のズレを無くし,小型化を可能にした。


観察と治療,血流測定を同時に行なえる低侵襲レーザー治療器(複合型光ファイバー径はφ1.02mm)

複合型ファイバースコープシステム


日本原子力研究開発機構(日本原研)発ベンチャー企業として2013 年9 月に設立されたOKファイバーテクノロジーは,複合型光ファイバー技術を応用した低侵襲レーザー治療器を開発した。

複合型光ファイバースコープの種類としては「焼灼レーザー用ファイバー」,「PDレーザー用ファイバー」,「血流計用ファイバー束」,「照明用ファイバー束」,「観察用ファイバー束」が挙げられるが,同軸タイプ(レーザー光と映像を同軸で伝送)では直径がφ 1.1 mm,2 軸タイプ(レーザー光と映像を2 軸で伝送)が直径φ 0.83mmとφ 1.02 mm,極細タイプ(映像のみ伝送)が直径φ 0.83 mmが開発されている。

今回,観察と治療,さらにリアルタイムで血流計測までを可能にした低侵襲レーザー治療器を開発。同社によると,一般的な内視は,観察方向とレーザー照射方向が異なり,使いこなすには熟練を要するが,この治療器では複合型光ファイバースコープの観察向とレーザー照射方向が一致しているため,対象物を観察しながら容易で安全に取り扱うことができるという。

複合型光ファイバースコープは小径のため,従来の内視鏡では気管支までしか挿入できないという課題もあって,例えば,これまでは切除するしかなかった末梢肺がんに対する光線力学的治療に対応する。また,子宮頚部を開口せずに子宮内診断とレーザー焼灼療法も可能にするとしている。

同社ではラックマウント型の複合型光ファイバースコープシステムも開発している。照明光源,画像装置,PDレーザー源などで構成されているもので,このうち,照明光源と画像装置は既に薬事承認を得ている。現在はPDレーザー源の薬事認可に申請中としている。

開発したこれらのシステムは,大学や病院において既に臨床研究を開始しており,今後の実用化が期待されている。◇
掲載:OPTRONICS(2015)No.10