光ネットワーク超低エネルギー化技術拠点「Victories」で取り組む光ネットワーク・デバイス開発

4×4光パススイッチ
4×4光パススイッチ

通信ネットワークの通信量は年率40%で激増しているが,ネット上の動画の普及,デジタル化に伴う放送と通信の融合などにより,2030年にも通信量は現在の千倍のネットワーク容量が必要になると考えられている。

また,電子ルータの国内総消費電力もトラフィックに比例して増大しており,単純に延長すると2020年には,国内総発電量にまで達する。この増大は,主に情報量の大きい4Kや8Kといった高精細映像によると考えられている。そのため,抜本的な低電力化ネットワーク技術が必要とされている。

超小型半導体ゲートスイッチ素子
超小型半導体ゲートスイッチ素子

こうした状況の中,産業総合研究所など企業10社は文部科学省 地域産学官連携科学技術振興事業費補助金・イノベーションシステム整備事業「Victories(Vertically Integrated Center for Technologies of Optical Routing toward Ideal Energy Savings)」において,共同で大容量・低消費電力を可能にする光ネットワーク・デバイス技術の開発を行なっている。

一つには,シリコンフォトニクスによる光パスプロセッサの開発。現在,ネットワークトラフィックの一部を,ネットワークノードで光のまま転送する仕組みが実用化されつつあるが,特にエンドツーエンドで伝送することが,ネットワークの効率的運用につながる。

そこで光パス・ネットワーク上でダイナミックに経路を切り替えられるように100ポート以上の入出力ポートを備えた光パススイッチが求められている。産総研はSi導波路チップを実装した4×4光パススイッチを開発しており,さらに今年のECOCでは8×8光パススイッチを発表した。産総研担当者によると,「光パス・ネットワークを構築する上で512×512光パススイッチが必要」という。来年にもこの光パススイッチを搭載したフィールドデモを行なう計画だ。

二つ目としては,大容量伝送に向け,チップ面積が1mm2の超小型高速半導体光ゲートスイッチを開発中だ。InGaAs/AlAsSb量子井戸では,この高速現象を起因とする位相変調効果があるが,この超高速全光位相変調の効果をもつ光導波路をInP基板上にモノリシック集積した超小型の半導体ゲートスイッチ素子を開発した。

この光ゲートスイッチ素子を用いて160Gb/sの超高速光信号を40Gb/sの光信号に多重分離することにも成功した。半導体量子井戸のサブバンド間遷移においてゲート幅は,20から30ピコ秒としている。

また,多粒度階層型ダイナミックノード技術の開発を進めており,協働10社との垂直融合型研究体制を構築。この連携では光パス・ネットワークのトポロジーを検討しながら,これを構成する光ノードにおいて,光伝送路の様々なパラメータをダイナミック,かつ自律的に最適化する光パス・ネットワーク技術の実証に向け,つくば地区での実運用ネットワークテストヘッド構築に取り組んでいる。