剥離した金属膜は粉体となるが,これを吸引ブロアで回収する。その後,粉体は遠心分離法で分離させる。このプロセスではガラスを傷つけることがないため,ガラスパネルの再利用も可能にするという。
レーザ剥離装置の構成だが,ドイツIPGフォトニクス社製の出力20Wクラスのファイバレーザと,同じくドイツ・エッジウェーブ社製のLD励起YAGレーザを搭載し,高速ビーム走査光学系,大型ワークに対応する搬送機構,集塵機構を備えている。外形寸法は4,000W×1,700D×2,500H,共試品寸法は1,100W×1,400Dで,またこの剥離装置を操作するためのオペレーションソフトウェアも開発している。
開発にあたっては,剥離性能の向上と加工条件の適正化に取り組むとともに,様々な材料に対する剥離実験も行なったという。
レーザは出力を上げることで,剥離時間を短縮させることができるが,さらにレーザビームの形状やビームプロファイルを最適化することで剥離効率を向上させることもできる。
通常レーザのビーム形状は円形で,ビームプロファイルはガウシアンモードで設計されているが,研究グループは,大面積の剥離性能を得るため,光学系を改造し,正方形の照射パターンを作り出し,さらにビームプロファイルもフラットにするよう設計した。
開発の過程ではDOE素子を使用した剥離実験も行なっており,カラーフィルタの剥離では通常の3倍の効率を実現したという。最終的にはレーザスキャン幅を拡大させることで,大面積での剥離に対応させた。
レーザによる剥離実験では,液晶パネルと太陽電池パネルを中心に行なったというが,これら以外にも様々な応用の可能性があるとし,実際,金属基板上に形成された数十μmの有機膜の剥離実験も行なったという。これについても十分に対応できることが分かったとしている。
剥離装置は2台のレーザを搭載しているが,近池氏によれば,「基本波では樹脂などの有機物の剥離に,532nmでは金属系材料の剥離に有効」という。今回の研究・開発にあたっては,剥離条件に関わる各種パラメータを実験によって取得できたとしている。ただ,実用化に向けては,パネルのサイズをスキャンによって自動検知するソフトウェアの開発が必要という。
さらにリサイクル市場では採算性など様々な問題も想定されることから,事業化を進めるにあたっては関連企業との協業も視野に入れている。今後はリサイクル市場でレーザの優位性を如何に訴求できるかがポイントになりそうだが,その動向が注目されている。◇