レーザで液晶・太陽電池パネルを再利用する—エスアンドデイが専用装置を開発

開発したレーザ剥離装置
開発したレーザ剥離装置

薄型テレビやパソコン,スマートフォンやタブレット等など—ハイテク家電には希少な物質が使用されているケースは少なくない。日本は,こうした資源の多くを輸入に頼っているが,廃棄される製品の中に存在する資源を掘り出すというリサイクルの動きも始まろうとしている。

日本はリサイクルに関する高度な技術を持っていると言われているが,コストの問題が懸念され,なかなかリサイクルビジネスに向かう機運が高まらないのが実情。廃棄物の中から,採算に見合う量の物質が取れるとは限らないためだ。とはいえ,リサイクル法の施行もあり,家電製品の回収,リサイクルに対する重要性は高まっている。

従来技術(左)と,開発した技術(右)の比較(提供資料を基に作成)
従来技術(左)と,開発した技術(右)の比較(提供資料を基に作成)

こうした中,液晶・太陽電池パネルを構成するのに使用されている物質を,レーザを利用して回収するという技術開発が取り組まれた。

これは2010年から約3年間,関東経済産業局の委託事業の下,液晶パネル製造装置の製造を手掛けるエスアンドデイと,産業技術総合研究所・環境化学技術研究部門・主幹研究員でレーザー化学プロセスグループ・研究グループ長の新納弘之氏ら研究グループによるもの。エスアンドデイ・代表取締役の近池正明氏によれば,実際に開発をスタートさせたのは2006年からだという。

液晶パネルや有機EL製造装置の開発と並行し,レーザによる新たなアプリケーションを模索。その一環として液晶パネルのリサイクルへの適用に着目したとしている。

液晶・太陽電池パネルには,インジウムやクロムなどといったレアメタルのほか,銀などの貴重金属が含まれているが,今回研究グループでは,これらの物質を効率よく除去,回収するレーザ剥離装置を開発した。

従来の剥離プロセスは,粉砕したパネルを,フッ酸・アルカリ系溶剤を使用して物質を融解させ回収する「湿式剥離(粉砕法)」と,ダイヤモンドグラインダを使い,パネル表面の物質を研磨と化学処理を施して回収する「乾式研磨(切削法)」がある。

今回開発されたレーザによる剥離プロセスは,パルスレーザ光をパネルの上からスキャニング照射し,ガラスから金属膜などの物質を剥がすというもので,レーザ光が金属膜などの物質を熱膨張させる現象を利用する。