冬の寒い時期に,暖かい鍋料理は格別です。但し今回はちょっと違う鍋の話題です。英国の王立協会にも関係していた圧力鍋…,そんなことを知って興味が湧き追い回してみました。
そもそも圧力鍋の原理は,液体の沸点が圧力によって変化することを利用し,加圧により水の沸点以上の高温度で調理するので,短時間で料理ができるのです。因みに,温度や気圧の概念が固まってくるのは17世紀頃になってからでした。空気の熱膨張を利用した温度計を1592年頃に発明していたイタリアのガリレオ・ガリレイ(1564−1642)の下で働くようになったエヴァンジェリスタ・トリチェリ(1608−1647)は気圧の存在を既に認識していました。その後,オランダのクリスティアーン・ホイヘンス(1629−1695)が1665年に水の沸騰温度は一定であることを発見し,英国のロバート・ボイル(1627−1691)が水の沸点は圧力によって変化することを発見するなどの展開がありました。
更に米国のウィラード・ギブズ(1839−1903)が1875年から数年かけて纏めた『不均質物質の平衡』の論文で,気体や液体の相変化などを熱力学と電気,化学の広い分野から考察することで,圧力と沸点の関係も明確になってきます。因みに,当初はこの内容が難しかったのでなかなか理解されなかったようですが,後には「熱力学のプリンキピア」とも呼ばれるようになるのです。尚,高い山に登ると気圧が下がり100℃以下で水が沸騰し,加圧すると沸点は上昇するなどの現象はギブズ以前から知られていました。以下,そんな現象を利用した圧力鍋の発明と展開の話題です。
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