今年は地震や異常気象などの影響や複雑な状況が絡みあって,一時的に店舗からお米が足りなくなるなどの騒ぎがありました。昔から主食としてきた米はその需給や価格の安定化を図るために国の政策として生産調整や備蓄などが行われていますがなかなか難しいものです。
時代をさかのぼると,中国大陸から伝わった稲作は弥生時代中頃には東北北部まで広がります。その頃は粥飯のような状態で,平安時代頃になって水気が殆どない飯が上流社会で食されるようになります。更に鉄の釜でお米を炊くようになると柔らかな飯になり,江戸時代には現在に近い炊き方になります。但し殆どの農家は収穫しても年貢米として納めていたのでお米を食べられるのは上流階級の人だけでした。その後明治新政府は年貢米を廃止し,稲の品種改良に努めます。白米が日本で一般化していくのはそれ以降です。
そんな歴史の中で米の処理も少しずつ変わってきています。一般的に米には,もみ殻を除いた玄米と,玄米から米ぬかを取り除いた胚芽米と,更に胚芽を取り除いた白米(精白米)があります(図1(a))。白米とはいっても普通の精米機では完全にぬかを取り切れません。表面に粘着性の強い肌ぬかと呼ばれる薄い層が残り,そのまま炊くとぬか臭いご飯になってしまうので研ぐ作業が必要になります。特に寒い冬などはお米を研ぐのが大変です。しかし1991(H. 3)年になって,研ぐ工程を不要にした米が現れます。或るきっかけから生まれた無洗米によって研がずに炊けるようになったのです(図1(b))。
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