5.2.1 医療用イメージング
医療用イメージング,画像化技術は医療用の三次元映像データを作り出すために頻繁に利用される。超音波による出生前の胎児診断が最もよく知られている医療用3Dスキャニングであろう。これは超音波で胎児を撮影し,それらを組み合わせて3D画像を作り出す技術である。両親にとって出生前に我が子の顔を見られる技術は大変魅力的で,医療保険の適用外であってもこの技術を利用する例が多い。CTやMRIの画像を組み合わせることでも三次元映像を作成することが可能である。現在では読み取り速度の速いCTスキャナーと高速な画像処理技術が実用化され,二次元の画像を組み合わせて鼓動する心臓の様子を映し出す3D動画として生成することも可能となっている。
また外科手術の際にそうした画像が利用されることもある。過去にはそうした画像を得るためには特定の医療機器が必要だったが,現在ではiPad上でMPEGファイルとして閲覧することが可能となっている。このため全体的な利用モデルが単純化され,さらに技術の採用が進むという好循環が起こっている。
6. 技術的背景
3D技術には二つの側面がある。ひとつめは三次元において,対象を撮像,感知すること,もうひとつは三次元で撮像,感知したものを再現することだ。
三次元における撮像あるいは感知は様々な異なる波長の可視,不可視光を用いて行われる。不可視光にはレーザー,赤外線,超音波,レーダーなどが挙げられる。可視光の代表例はカメラで,不可視光センサーとの組み合わせで利用される。
三次元における再現技術の例としては,3DTV,ホログラフィ,3Dプリンターなどが挙げられる。これらのデバイスは3Dで補足されたイメージを取り入れ,現実世界で人間が見るのと同様の形で再現する。
3D再生は3Dイメージングとはまったく系統の異なる技術である。このレポートでは3Dイメージングを中心に取り上げることにする。
3Dイメージングにはアクティブ,パッシブ,2つのタイプが存在する。アクティブ方式は対象を特定の種類の光,波長を照射し,変化する特性を感知する方法である。パッシブ方式はトランスミッターを介さずカメラによる光の照射によって3次元計測を行う方法を指す。図3で三次元距離情報を得るアルゴリズムを示す。それぞれの方式に一長一短があり,各アプリケーションによってどの方法が最適かを選択することになる。