3.2 市場の抑制要因
3.2.1 パッケージ品質の低さ
VCSELはGaAs基板をベースとするため,暗線欠陥の発生は避けられない問題である。半導体レーザー中の少数キャリアの集中がその原因となる。こうした欠陥は非放射遷移の中心として働き,レーザーのしきい値を挙げることになる。暗線欠陥は分布ブラッグ反射器内で活性層に向けゆっくりと成長してゆき,いったん活性層に到達すると,その光により急速に劣化しデバイスの頓死を引き起こす。ゆえに,高性能のVCSELには,あらゆる要因に配慮して作製した,高品質な材料が必要となる。
様々なアレイへのパッケージングの方式が考案されてはいるものの,実用に耐える密封パッケージングはいまだに存在しない。VCSELのメーカーは,非密封状態で安定動作するアレイを開発し,この課題に応えている。
3.3 市場機会
3.3.1 青色,緑色VCSELの開発
InGaNをベースとする青色,緑色VCSELが実現すれば,ピコプロジェクタのような小型の光学デバイスに導入されるだろう。レーザープリンタ,高密度高速の光学ディスク,フルカラーディスプレイでの利用も考えられる。さらに開発が進めば,高速通信や自由空間光通信などでの市場機会もあると思われる。また,RGB三原色の超小型レーザーディスプレイも実現可能になるだろう。
3.3.2 緑色
緑色レーザーは短波長の中でも成長分野のひとつである。緑色VCSELは一対の分布ブラッグ反射体を持つ共振器をベースとしてc面GaN基板上に生成され,シリコン基板にボンディングされる。活性領域は5つGaN/InGaNの多重量子井戸で構成されている。開口径は10µmである。
GaNベースのレーザーでは,特に緑色の出力の難易度が高い。なぜなら緑色出力には高いインジウム混合率が必要とされ,結晶構造のゆがみや欠陥が発生しやすくなるからである
緑色VCSEL市場は2014年時点では870万米ドル規模だったが,複合年間成長率46.1%で成長し,2020年には7980万米ドルに達すると見られている。
アプリケーション別に見ると,生体組織解析が最大で,続いてレーザープリンタ,チップスケール原子時計,その他となる。
その他に含まれるのはバイオメトリクス,産業用センサーなどで,複合年間成長率51.3%ともっとも急速に拡大すると予測されている。