4.2 セキュリティ,防衛
セキュリティ及び防衛市場においても,CLは,爆発物,化学物質,生体有害物質などの検知,分析技術として利用されている。一方で,純粋な軍用アプリケーションとしてもいくつかの実用例がある。Northrop Grummanは,QCLを用いた対ミサイル赤外線妨害装置(IRCM)を開発し,テストを行っている。同システムにQCLを提供しているのはDaylight Solutionsである。この装置にはミサイルの検知だけでなくジャミングの機能も盛り込まれている。
対ミサイル赤外線妨害装置にQCLが組み込まれる前には光パラメトリック発振器が利用されていた。OPOは大型で重いため,当時のIRCMの総重量は数百キロもあった。結果として,IRCMの採用は大型輸送機に限定されていた。
CL光源のもう一つの軍事応用は中赤外線照明である。携帯,あるいは設置型のこれらデバイスは,敵味方識別,捜索救助,近接航空支援,攻撃目標指示に利用される。
将来的には,QCLはテラヘルツの光源として,空港のボディチェックや手荷物検査などに用いられるだろう。そのためにはテラヘルツ帯における高出力化と,生産コストの削減が必要となる。
セキュリティ,防衛市場に関連するニーズは以下の通りである。
・コンパクトで移動性のある携帯型システム
4.3 環境
中赤外線分光分析は特にガスの検知と分析に優れている。そのため,環境分野におけるQCLの応用の中心は当然ながらガスである。ガス検知には,連続的な排ガス監視,空気質のモニタリング二つの種類がある。
連続的な排ガス監視の対象となるガスは通常はSO2,NO2,CO2,CO,NH3など単純分子であることが多い。
一方で,空気質のモニタリングにはいくつか特定のアプリケーションが含まれている。大気監視システムは,環状道路や,都市部に設置される大型機器の環境へのインパクトを測定するものである。温室効果ガス監視システムは地球温暖化に関するデータの収集に不可欠である。
また,室内の空気質の監視にもニーズがある。しかし,CL技術はいまだ高価である。駅やトンネルなど大きなスペースの場合,ひとつか二つの設置で十分効果を発揮するが,多くのセンサーの設置が必要とされる多層のオフィスビルなどで採用されるにはまだまだ費用的なハードルが高い。この分野で競争力のあるCL製品が登場するまで,数年以上かかると目されている。