14. 結論
ADASにおける光学センサーの市場は今後5年間に100億ドル規模に成長すると予測されている。しばらくの間は,欧州が全世界をリードするトレンドは変わらない。しかし,文化的な障壁,投資の効率性などの経済的な背景から,将来的には欧州以外の地域で大きな成長が予測されている。特にアジア諸国での成長は著しく,普及拡大による価格下落の恩恵なしでも,かなりの台数が販売されると期待される。
自動車向け光学機器の応用で,ADAS以上に成長が見込まれている領域は汚染物質の検知技術である。最近話題となった排気ガス不正問題,あるいは中国,タイ,マレーシアといった新興諸国での環境問題がその背景にある。検知対象は排気ガスだけではなく,車内の空気質も想定されている。特に後者は,揮発性有機化合物の影響を受けやすいため関心も高い。
こういった理由で,顕微分光法の最も新しい応用先として自動車分野が注目されている。継続的な価格の下落もその普及に貢献するであろう。今後,排気ガスなど見えない物質を可視化するLIDARが現れるなど,機能の多様化が進むと思われる。
15. 最後に
ADAS,自動運転の拡大要因の部分で述べた通り,自動運転により新たな運転者層の獲得が見込まれている。しかしながら,自動運転が開拓する運転者層は,必ずしも「新しい」わけではない。
年齢別に交通事故の年間死亡者を見ると他の年代と比較して65歳以上の死亡率が高い。自動運転の普及は,高齢者の運転リスクを減らすとともに,地方都市などで,高齢者の日常的な足を確保することにもつながるだろう。
日本におけるモータリゼーションは,1964年の東京オリンピックから一気に加速したといわれている。二度目となる東京オリンピックが開催されるのは2020年,各社がレベル4の自動運転実現の目標としている年である。
ロボットタクシーやモータリゼーション2.0など,東京オリンピックが自動運転のショーケースとして世界中の注目を集めることは間違いない。ここでのパフォーマンスが,自動運転,ひいてはそこに搭載される光学機器の今後に大きな影響を与えるだろう。
株式会社グローバルインフォメーション
マーケティング部 部長
(月刊OPTRONICS 2016年5月号掲載)
このレポートは,㈱グローバルインフォメーションが扱う各国の市場調査会社の報告書をもとに執筆したものです。豊富な資料を揃えていますので,より詳細なデータや関連データだけでなく,その他にもお探しのデータがある場合,同社までお問い合わせください。
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