5. 世界の用途別中赤外線レーザー市場
中赤外線レーザー市場は用途によって,非侵襲医療診断,自由空間通信,レーザーメス,分光分析,リモートセンシングの5つに分類される。その中では,分光分析の市場が大きく,2019年には2億8,980万米ドル規模に拡大する。
①非侵襲的医療診断
糖尿病患者の血糖モニタリング,呼気分析,皮膚がん,乳がんの発見,牛の疾患である趾皮膚炎の早期発見など様々な用途で中赤外線技術が利用されている。中赤外線の波長領域では,糖尿病の主な指標である,アルブミン,血糖値,尿素,ビリルビンなどの小さな変化を捉えることが可能で,患者の健康状態の追跡に適している。中赤外線を用いた非侵襲診断はその正確性と迅速性において非常に魅力的な選択肢となっている。
②自由空間光通信
自由空間光通信技術は,一秒当たり数十メガバイトのデータを数千キロ以上離れた場所に伝送する衛星をはじめ,大量のデータ伝送を必要とする様々な場所で導入されている。同様に地球を離れた位置にある探査機と,近地球のステーションの間でもデータ伝送が可能で,惑星探査機は大量のデータを生成し,地球へ伝送する。ここでも自由空間光通信技術が採用されている。
③レーザーメス
レーザーメスは単一の細胞レベルで切除が可能なため,侵襲的な処置とそれに伴う組織の再生を最小限に抑えることができる。手術痕も小さく,傷の治療に必要な時間も短くなる。例えば,ピコ秒赤外線レーザー技術により,周辺組織の凝固,炭化,その他の細胞破がほぼ完全に防げるため,細胞単位の微細な音声手術が現実に大きく近づいている。
6. 各地域の中赤外線レーザー市場
北米は中赤外線レーザー市場では最も有望な地域で,世界市場の実に46.1%のシェアを占めている。様々な業界で中赤外線技術の採用が進んでおり,最近の技術的な進展がこれに拍車をかけた形だ。防衛分野の市場規模は2014年時点で7,230万米ドルと最大だが,成長率は3%とさほど大きくはない。逆に研究部門での利用拡大は急速に進み,2019年には6,490万米ドルに達すると予測されている。
アジア太平洋地域はその高い成長率から,2019年には1億米ドル以上の規模に拡大する。化学,医療分野での利用拡大がこの成長に寄与しており,特にレーザーメスの需要が大きく,2019年には防衛よりも収益が大きくなると思われる。
7. 最後に
中赤外線はレーザーの中でも新興の市場となっている。用途が非常に多岐にわたるため,様々な業種の企業がこぞってこの市場に参入を目論んでいる。業種を超えた提携も盛んに行なわれており,その結果生まれたたった一つの製品から新たな市場が開拓される可能性もある。
ニッチ市場で第一位の企業となるか,幅広い応用を持つ技術を開発するのか,各社の戦略に,今後も注目して行きたいと考えている。
株式会社グローバルインフォメーション
マーケティング部 部長
(月刊OPTRONICS 2016年3月号掲載)
このレポートは,㈱グローバルインフォメーションが扱う各国の市場調査会社の報告書をもとに執筆したものです。豊富な資料を揃えていますので,より詳細なデータや関連データだけでなく,その他にもお探しのデータがある場合,同社までお問い合わせください。
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