米国調査会社BCC Researchによると,世界の中赤外線レーザーの市場規模は,2013年の時点で4億7,500万ドルだった,2014年から2019年にかけては年平均成長率(CAGR)8.2%のペースで拡大すると予想されており,2014年に5億120万ドル,2019年には7億4,260万ドルになる見通しとしている。同社の調査結果をまとめた調査レポート「中赤外線レーザー:技術,用途,世界市場」の中から一部を紹介する。
1. 中赤外線レーザー市場の概要
①中赤外線レーザー技術の進歩
電磁スペクトルとは電磁放射によって生成されるすべての電磁波の周波数帯域を指す。電磁スペクトルは周波数と波長帯によっていくつかに分類される。それぞれの波長は可視性,エネルギーといった点で異なる特性を持っている。
中赤外線の波長範囲については諸説あり,防衛分野では,40μmまでを中赤外線とする例もある。検出やメスなどには,非赤外線技術が利用されてきたが,技術進化により,人の眼に安全な中赤外線への置き換えが進んでいる。低出力の中赤外線レーザーでは金属加工にも用いられている。
CO2レーザーはこれまで市場をけん引してきたが,ここ数年で半導体レーザーの技術革新が進み,新たな製品の発表が相次いでいる。量子カスケードレーザーもその効率的な可変性から有望視されており,世界中の様々な企業が量子カスケード関連特許を登録している。
②中赤外線技術の優位点
中赤外線は防衛,産業,IoTを含む通信,医療,ヘルスケアなど幅広く用いられている。中でもセンシングでは,分光計測,生体イメージング,物質特性分析,スタンドオフ型爆発物検知,顕微鏡分析,非破壊検査など,多様な用途がある。
分光計測,イメージングなどにおいては,中赤外線が最も簡単かつ迅速でコスト効率の良い方法とされている。中赤外線はまた,外科手術用のメスとしても利用されている。他の切除技術に比較して,周辺組織へのダメージを極小に抑えることができるためだ。また中赤外ファイバーは波長伝送,高出力,高耐久性が特徴となっている。
官能基の特徴的な赤外吸収による化学物質の同定も,中赤外の得意とするところである。