鴫原正義
普段何気なく使っている鉛筆ですが,その発明の経緯をたどる程,興味深い話題が見えてきます。最近は,シャープペンシルやボールペンに替わってしまい,使用する頻度も少なくなっていますが,子供達の勉強は鉛筆から始まります。今回は,そんな鉛筆の世界を覗いてみました。
古代のギリシアやローマでは円盤状に加工した鉛の塊を動物の皮などに擦り付けて文字や絵を書いたとされていますが,鉛筆として黒鉛が使われるのは中世以降です。黒鉛は炭素原子が平面状に結合し且つ積層した炭素同素体ですが,その黒鉛を使った最初の鉛筆は16世紀の英国で生まれたとされています。
山村の羊飼いが黒鉛を布に擦ると黒い線が描けることに気付きます。それをヒントに細長い板に小さな黒鉛を挟み紐で縛り付けたものを,仲間と一緒にロンドンで売り出したところ評判になったとあります。一方同じ頃に,近代動物学の先駆者と呼ばれるスイスのコンラート・ゲスナー(1516~1565)が丸棒の先端に開けた穴に黒鉛の塊を詰め込む構造を考案しています。
この続きをお読みになりたい方は
読者の方はログインしてください。読者でない方はこちらのフォームから登録を行ってください。