ミニインタビュー
加治屋先生に聞く
日用品に研究が応用されることに期待が膨らむ
─この研究を始めたきっかけを教えてください。
(加治屋)もともと私達の研究室では,食品以外のものをあまり扱ってきませんでしたが,ある時,科学の指導を鹿児島の高校生にしてほしいと話がありました。そこでテーマとして地元の様々な問題を提起したところ,竹害について生徒たちが熱心に調べてくれたので,竹の有効利用について研究しようとなったのが始まりです。
─この研究の面白さを教えてください。
(加治屋)この研究は高校生と一緒にしているので,思いもよらない発想やアイデアがとても面白いです(笑)。実験装置もメーカーから買うのではなく,全部手作りなところも,ザ・大学の研究とは違って面白かったですね。
─研究している中で苦労していることはありますか。
(加治屋)高校生は定期試験があります。研究が好調でもその期間が空くと最初からやり直しみたいな感じになるのは苦労しました。勉強も進路選択もちゃんとしてもらわなければいけないので,その辺のバランスをとってもらうのも大変でした。
─この研究がどのように応用されることを期待していますか。
(加治屋)初めは純天然物の日焼け止めなど,化粧品にできたらいいと思っていました。ですが,化学物質を少し減らして代わりに入れる代替品には使えても,竹だけで作るには原料を登録からしないといけないという難しい現実があるということは勉強になりました。
では他にどんなものに使えるか考えたとき,洋服の繊維や車の塗料や窓のフィルムなどに入れて紫外線を防止するなど,化粧品にこだわらなくても活用先は身の周りにあると気づきました。今後日用品などに派生していき,竹が沢山使われることになったら嬉しいです。
─若手研究者が置かれている状況をどう見ていますか。
(加治屋)私も最初は任期制でしたが,やっぱり任期がある職は嫌だと思っていました。でも振り返ってみたら任期があるからこそ,その期限に業績を出そうと頑張れたところもあるので,置かれた環境で頑張るのもいいと思います。
─さらに若手や学生に向けてメッセージをお願いします。
(加治屋)色々なことにチャレンジしてほしいです。日本ではなく海外に行ってみてもいいと思いますし,視界を狭くせずに大きく羽ばたいてもらえたらいいと思います。
(聞き手:梅村舞香/杉島孝弘)
カジヤ カツコ
所属:鹿児島大学 農学部 研究教授
略歴:2004年3月,静岡県立大学大学院 生活健康科学研究科 食品栄養科学専攻 博士課程修了,博士(食品栄養科学)取得。同年4月より,山口大学医学部医学科にて助手(現 助教),講師として生理学の教鞭をとりつつ,循環器系の研究スキルを磨き,各種学会で多数の受賞。2013年9月に鹿児島大学農学部に着任。地域資源に眠っていた素材の新機能を次々と発見し,研究成果の活用・普及のため特許取得し,企業と協同して開発した商品多数。2022年7月に研究教授の称号を付与され,現職。管理栄養士の資格を持ち,小中高等学校への食育活動もおこなっている。専門は食品栄養科学,分子細胞生理学,膜動態化学。
趣味:クラシックバレー(子どもの送り迎えの空き時間で,一緒にレッスンを受けたらはまった!)
(月刊OPTRONICS 2024年12月号)