5. おわりに
本稿では,電界処理を用いて透明なガラス内へ光情報を「見えないように」記録する技術と,その記録をガラス表面に構造化して「可視化」する技術について紹介してきた。本技術は,感光性材料をテンプレートとして用い,電界処理によりガラスへ構造転写することで,直接感光性を持たないガラスへ可視波長域の光情報を記録できるという特徴を有する。光情報記録から表面構造化まで,2次元の面として処理可能であり,大掛かりで高価な装置を必要としない。本稿では解説には至らなかったが,放電を用いない,よりシンプルな情報転写法も見つかっており,基礎研究が進んでいる6)。身近な透明なガラスに記録した情報が「見えた!」と感じる瞬間の驚きや感動は,人に強い興味を喚起し得る。本技術を応用した研究開発に興味を持たれたら,是非ご連絡頂きたい。
謝辞
本研究の一部は,JSPS科研費 JP 18K04765並びに,「物質・デバイス領域共同研究拠点」の共同研究プログラムの助成を受けたものである。本研究に関わる全ての共同研究者に,心より感謝の意を申し上げる。
2)Y. Hirai, K. Kanakugi, T. Yamaguchi, K. Yao, S. Kitagawa, and Y. Tanaka, “Fine pattern fabrication on glass surface by imprint lithography” Microelectron. Eng., 67-68 (2003) 237-244.
3)D. Sakai, K. Harada, S. Kamemaru, and T. Fukuda, “Hologram replication technique in glass plates using corona charging”, Appl. Phys. Lett., 90 (2007) 061102-1-3.
4)D. Sakai, K. Harada, Y. Hara, H. Ikeda, S. Funatsu, K. Uraji, T. Suzuki, Y. Yamamoto, K. Yamamoto, N. Ikutame, K. Kawaguchi, H. Kaiju, and J. Nishii, “Selective Deposition of SiO2 on Ion Conductive Area of Soda-lime Glass Surface”, Sci. Rep., 6, (2016) 27767-1-7.
5)D. Sakai, K. Harada, H. Shibata, K. Kawaguchi, and J. Nishii, “Surface relief hologram formed by selective SiO2 deposition on soda-lime silicate glass”, PLOS ONE, 14, (2019) e0210340-1-9.
6)酒井大輔,“ガラスの表面処理方法及び表面処理装置”,特願2019-030065.
■Associate professor, School of Regional Innovation and Social Design Engineering, Kitami Institute of Technology
(月刊OPTRONICS 2020年5月号)
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