ITOおよびIZOに代わる酸化インジウム系透明導電材料開発の試み

4. おわりに

現行の酸化インジウム系TCOの課題について言及し,筆者がこれまでの研究で蓄積してきたドーパントのイオン半径およびルイス酸強度に関する概念を適用する解決方策としてB原子に着目した。開発したBドープIn2O3により,可視光領域の平均透過率を従来ITOに対して10%向上させた。XRDスペクトルの解析結果から,B原子はIn2O3マトリックスに固溶しており,ビックスバイト構造のIn2O3に局所的な収縮歪みを引き起こしていることがわかった。

導電膜としての抵抗率は1.1×10–3 Ωcmであったが,現時点では,ドーパント含有量,スパッタ成膜およびアニール条件の最適化が不十分であることから,今後の条件調整によりさらなる低抵抗化が期待できる。また,IZOで問題となっていたZnを用いていないため,薬品耐性と高温での安定性向上が可能である。本提案材料は,他のITO代替材料と異なり,原料の置き換えだけで既存のITOコンパチブルなプロセスがそのまま使えることが特徴である。

参考文献
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■A challenge to the development of indium oxide-based transparent conductive material substituting ITO and IZO
■Shinya Aikawa

■Associate Professor, Department of Electrical and Electronic Engineering, Kogakuin University

アイカワ シンヤ
所属:工学院大学 工学部電気電子工学科 准教授

(月刊OPTRONICS 2019年6月号)

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