5. まとめ
本稿では,光コムを用いた特徴的な偏光計測や顕微鏡下での計測について紹介した。光コムが開発された当初は,光コムが有する人類が手にした最も精密な「光のものさし」としての特徴に注目が集まり,ノーベル物理学賞受賞へつながった。しかし,現在では,単なる光のものさしから,光コムが有する様々な特徴を利活用した革新的計測へとつながっている。今後は,さらに光コムが有する特徴を極限まで高め,あらゆる活用法を見出していくことで,新たな産業計測やバイオ計測法へ展開していきたいと考えている。
なお,今回紹介した研究は,科学技術振興機構(JST),ERATO美濃島知的光シンセサイザプロジェクト(JPMJER1304)およびJSPS科研費(JP15H02026,JP18H01901)の支援を受けて行われた成果の一部である。また,安井武史教授,岩田哲郎教授(徳島大学),長谷栄治博士(高輝度光科学研究センター),大久保章博士,稲場肇博士(産業技術総合研究所),山本裕紹博士(宇都宮大学),およびその他大勢のERATO研究メンバーのご協力のもと行われた研究である。この場を借りて感謝申し上げます。
2)美濃島薫,“総論:光コムによる光波の精密制御「知的光シンセサイザ」の拓く世界,” オプトロニクス 36, 76-80 (2017).
3)T. Udem, R. Holzwarth, and T. W. Hansch, “Optical frequency metrology,” Nature 416, 233-237 (2002).
4)I. Coddington, N. Newbury, and W. Swann, “Dual-comb spectroscopy,” Optica 3, 414-426 (2016).
5)T. Minamikawa, Y. -D. Hsieh, K. Shibuya, E. Hase, Y. Kaneoka, S. Okubo, H. Inaba, Y. Mizutani, H. Yamamoto, T. Iwata, and T. Yasui, “Dual-comb spectroscopic ellipsometry,” Nature Commun. 8, 610 (2017).
6)宮本周治,長谷栄治,南川丈夫,謝宜達,水谷康弘,岩田哲郎,安井武史,山本裕紹,“スリット共焦点と波長/空間変換を用いたスキャンレス・フルフィールド共焦点顕微鏡,” 精密工学会誌 82, 679-682 (2016).
7)E. Hase, T. Minamikawa, S. Miyamoto, R. Ichikawa, Y. -D. Hsieh, K. Shibuya, Y. Nakajima, A. Asahara, K. Minoshima, and Y. Mizutani, “Scan-less confocal phase microscopy based on dual comb spectroscopy of two-dimensional-image-encoding optical frequency comb,” arXiv 1705.07236 (2017).
8)E. Hase, T. Minamikawa, T. Mizuno, S. Miyamoto, R. Ichikawa, Y. -D. Hsieh, K. Shibuya, K. Sato, Y. Nakajima, A. Asahara, K. Minoshima, Y. Mizutani, T. Iwata, H. Yamamoto, and S. Miyamoto, “Scan-less confocal phase imaging based on dual-comb microscopy,” Optica (accepted).
■Graduate School of Technology, Industrial and Social Sciences, Tokushima University
所属:徳島大学 大学院社会産業理工学研究部
(月刊OPTRONICS 2018年6月号)
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