4. 高速なゴーストイメージングと高精細SPIへの挑戦
4.1 高速ゴーストイメージング
図1(b)に示す計算機ゴーストイメージングでは,計測速度はSLMのリフレッシュレートに依存する。位相変調できる液晶型SLMにおいて,リフレッシュレートは100 Hz以下であるものが多い。高速なものでも数kHz程度である。筆者らはゴーストイメージングを高速化するための手法を提案している6)。提案手法の概念図を図3に示す。
図に示す光学系では,SLMに照射する光源にレーザーアレイを用いる。レーザーの発光位置を変更することで,測定対象を照射するスペックル強度分布が全く異なるものになる。面発光レーザーアレイを光源に用いることを想定すると,数GHzで照射分布を変更できる。
図3に示す計測系においては,これまでに数値解析および実験により検証を行っている。実験については,単一のレーザーを2次元移動ステージで走査することで,レーザーアレイによる照射光生成を代替させている。図4に実験系を示す。実際にこの系では,機械ステージ制御が必要であるため高速動作できるわけではない。
しかし,原理検証の観点では有用である。図5に実験結果を示す。図より,測定対象の概形が再構成されていることがわかる。
この結果は,1000以上の素子を測定系に組み込む実装方法等,課題は残るものの,計測の高速化に関する重要な成果であると考えている。
4.2 SPIの高画素化
要素数がN 2 である2次元画像のアダマール変換を基本とする従来手法の処理手順に対して,1行毎の変換データを計測し再構成する手法を提案している(図6)8)。この手法では,要素数がN である行データの変換をN 行分計測する。周波数多重技術を用いることで単一の受光素子により各行の変換データを計測できる。まず,各行毎の照射光に固有の時間周波数を与える。受光素子において測定される信号をフーリエ変換することで,各行の変換データを抽出することができる。光源と受光素子に,DMDのリフレッシュレートに比べて広帯域および高速応答なデバイスを用いることで,高速な計測が可能である。
再構成のための計算では,N ×N 画素の画像を提示するためにN ×N 要素を有する行列N 個を用いる。従来の2次元変換では,N 2×N 2 要素を有する行列が必要とされることから,改良手法が計算負荷を低減するために有用であることがわかる。この特性より,高画素イメージングにも整合するといえる。
この手法はすでに実験的に検証されている。実験系の写真を図6に示す。この系検証実験において,得られた再構成結果の例を図7に示す。図より,測定対象である文字が再構成されていることが確認できる。