2.2 ひずみ速度断層可視化法(Optical Coherence Straingraphy)
OCSAとは,荷重負荷時におけるサンプル内部の動的挙動をOCTにより連続断層撮影し,変形量を定量的に断層検出する手法である。任意の2枚のOCT断層像にデジタル相互相関法(DIC)を適用して変形ベクトル分布を検出し,これを連続適用することにより動的変形量を検出する。OCT断層像はDICに用いられるデジタル画像に比べ画素数が極めて少ないため,十分な情報が得ることが困難である一方で,マイクロメカニクスの検出のためには高解像度な移動変形ベクトル分布が不可欠である。
このため,DICを施す検査領域(サブセット)を段階的に縮小しながら再帰的に相関処理を行い,高S/Nを維持したままベクトル解像度を向上させている5)。更に,OCT断層像に内在する散乱スペックルノイズの影響を低減するため,隣接した相関係数分布の乗算処理を再帰処理に導入し,ランダムノイズを低減して正確なピクセル移動量を決定する隣接相互相関乗法(ACM)6)も採用している。サンプル内部の変形による屈折率分布の変化は干渉信号に鋭敏に反映されるため,基本的に変形量は微小である必要性が高い。そのため,検出移動量としてはサブピクセル精度の向上が不可欠であり,本アルゴリズムでは風上勾配法7)をまず適用している。
これは,微小変形前後における干渉強度分布の時空間変化を,移流方程式に基づき,強度分布の時空間勾配と移動量によって定式化する手法である。勾配法は高解像度な移動変形ベクトル分布の検出に有利であることが知られており8),検出ベクトルの空間解像度が高い条件にて最適となる。本アルゴリズムでは検出精度の向上を実現するため,空間勾配の差分化には1次精度の風上差分を用い,移流方向の強度勾配を内挿によって推定した。サブピクセル変形量の高精度化を更に充実させるため,検査領域の変形を考慮したサブピクセル解析法9)(画像変形法と省略する)を適用した。
これは,変形前後の伸縮及び剪断変形させた検査涼気との相互相関法を行い,Newton-Raphson法を用いた相関値を指標とした反復計算によって最適なサブピクセル移動量を決定する手法である。なお,変形前後の座標と輝度を対応させるため,検査領域内の干渉強度分布を空間連続化する必要があるが,本手法では光学系に依存した点広がり関数が撮影画像に畳込まれる幾何光学理論に基づき,sinc関数を3次関数近似した逆畳込み積分10)を施し,連続的な干渉強度分布を復元する画像補間法を採用した。反復計算の初期値としては風上勾配法の算出移動量を与え,収束困難な場合には風上勾配法のサブピクセル移動量を算出結果とした。
なお,モンテカルロシミュレーションによって作成した疑似OCT画像を用いた精度検証の結果,移動量とひずみRMS誤差は,0.0363 pixel(0.216μm)と300με(マイクロストレイン)まで到達可能であり11),十分な精度で断層検出できることが分かっている