2. 提案手法
2.1 応力断層可視化法(Optical Coherence Stressgraphy)
光コヒーレンス断層画像法(OCT)3)は低コヒーレンス光干渉法に基づき,計測対象内部からの後方散乱光を検出し,5μm程度の高空間分解能と数msec/frame程度の高時間分解能を有して,断層可視化する技術である。偏光感受型OCTは図1に示すように広帯域光源を用い,直線偏光子(LP)と1/4波長板(QWP)を用いて試料に円偏光を照射する対物アームと,偏光コントローラによって45°直線偏光にした参照光アームとにより構成された低コヒーレンス干渉光学系である。
干渉波は偏光ビームスプリッタ(PBS)カプラにて直交する2偏波EH とEV に分波され,両偏波成分の断層画像IH(x, z)とIV(x, z)を取得することができる。下式⑴に従って,偏光波の位相差分布δ(x, z)に依存するストークスパラメータマップS3 /S0(x, z)を,IH(x, z)とIV(x, z)から算出することができる。δ(x, z)は力学複屈折性効果に基づき光軸垂直xy断面の2次主応力差分布σ(x, z)に比例するため,S3 /S0(x, z)の強度分布は余弦関数の縞模様として現れることが理解できる。
このことから,S3 /S0(x, z)における干渉縞の奥行きz方向空間周波数分布を検出し,2次主応力差分布σ(x, z),つまり,主剪断応力分布に相当する応力断層検出が可能となる。
しかし,一般にOCT断層画像は低解像度であるため,高速フーリエ変換を用いた干渉稿周波数解析だけでは,高解像度・高精度な周波数断層分布の検出は不可能である。また,光学的異方性を有する物質では,光弾性効果の非線形性が予測される。このため,非線形パラメータ同定法に基づく干渉縞空間周波数分布検出アルゴリズムを開発した。
これは,取得断層像S3 /S0(x, z)から抽出される空間周波数の解像度と検出精度の向上を実現すると共に,検出空間周波数と主応力差のキャリブレーション結果から,応力断層像を得る手法である。検出されたS3 /S0(x, z)断層像に対して関心領域内を設置し,位相差分布δ(x, z)を施行関数Asin(f x x + f z z+φ)として与え,ニュートンラフソン法を用いてA,fx ,fz ,φを同定する。初期値fx0 ,fz0 は,2次元FFTによる暫定空間周波数を与え,初期値A0 とφ0 はそれぞれ,最大最小値の平均値とπを与えた。
標準偏差フィルタによる過誤同定値は非収束関心領域の値と共に除去し,移動最小二乗法を用いて隣接同定値から内挿補間を施した。更に,関心領域サイズは2次元FFTの暫定空間周波値を基に,2波長分の干渉縞を含むように可変させ空間解像度を向上させている。