1. はじめに
コメに対して社会は,高品質,低価格,安全安心を求めており,コメ生産現場では,高品質化に向けて栽培管理の基礎情報として,イネの草丈,茎数,葉色(生育量)を定期的に調査している。この調査(慣行測定)では,ひと株ごとに生育量を手作業で測定している。そのため,水田内全体はもちろん,多数の水田を調査対象とすることが極めて難しい。そこで,調査作業労力低減や能率向上等を目的として,リモートセンシング技術を活用した生育量測定手法が研究されている。
これまで,デジタルカメラに代表される受動型の光学センサを用いた葉色の測定手法が提案されている1, 2)。しかし,測定時の照明条件の影響を低減することは容易でなく,均質な条件下で多数の水田を測定することが難しい。一方,測量分野で普及している能動型の光学センサとしてレーザスキャナ(レンジセンサあるいはLiDAR)がある。レーザスキャナは,受動式の光学センサにくらべ,測定時の照明条件の影響を受けにくい特徴をもつ。また,航空レーザ測量に代表される計測形態で,広範囲の水田を短時間で測定可能である。
ここでは,航空機(あるいは小型無人航空機)レーザスキャナ計測による生育量(草丈,茎数,植被率(茎葉の水平専有面積率))の推定に関する取り組みを紹介する。
※本内容は,「写真測量とリモートセンシング」に掲載された「時系列レーザスキャナ計測による水稲の生育診断の可能性検討」,「応用測量論文」に掲載された「水稲群落上方からのレーザスキャナ計測による生育モニタリングの検討」,「小型・低コストな無人無線航空機ベースのレーザスキャナ計測システムの試作とその性能評価」に基づく。